吉川英治文学新人賞、現代社会映す2作

文化往来
2019/3/18 6:00
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気鋭のエンターテインメント作家に贈られる吉川英治文学新人賞の今年の受賞作は、いずれも現代社会を映す2つの連作短編集が選ばれた。塩田武士「歪(ゆが)んだ波紋」はフェイクニュースなどにまつわる社会派ミステリー。もう一つの藤井太洋「ハロー・ワールド」はネット世界の自由をめぐる近未来小説だ。「2作とも今日的なテーマや題材を扱っている」と選考委員の大沢在昌は評価した。

左から塩田武士、篠田節子、西村京太郎、藤井太洋の各氏

左から塩田武士、篠田節子、西村京太郎、藤井太洋の各氏

「SNSで個人が自由に情報発信できる現代は、何が本当か分からない。そんなときこそプロの記者の出番であり、目的意識を持った人物を書いていきたい」と元新聞記者の塩田。一方、藤井は「主人公は自分の分身であり、私自身もかつてプログラムを作った経験がある。そんな自分から見たネット社会を描いた」と振り返った。

吉川英治文学賞は篠田節子「鏡の背面」に決まった。薬物依存症や虐待被害の女性らが暮らす施設を舞台に、聖女と慕われていた女性の過去を描いた。「書く度に新たな挑戦を続けており、気分だけは新人。小説のフィールドは広いので、それをいっぱい使って書き続ける」と篠田。「十津川警部」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞した西村京太郎は「今も毎日(400字詰め原稿用紙)20枚は書いている」と健筆ぶりを明かした。

(中野稔)

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