一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、東京・千代田)は12日、2018年10~12月期の国内ベンチャーキャピタル(VC)投資額が前年同期比4%減の369億円だったと発表した。マイナスは13四半期ぶりだ。景気の減速懸念から一部のVCは投資にブレーキをかけている。活況だったスタートアップ投資の潮目が変わる可能性が出ている。
VCや事業会社が設立したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)で回答した99社の投資動向を集計した。投資件数は342件と、前年同期比3%減だった。18年通期では投資額が前年比8%増の1361億円、投資件数は12%増の1287件だった。
四半期ベースでマイナスに転じた理由として「投資に慎重になるVCが出てきている」(VECの松井秀樹業務部長)。
背景は2つあるという。1つは世界景気の変調だ。中国景気の減速や米中貿易戦争などで日本の景気の先行きが見通しにくくなっている。
実際、「リーマン・ショックのような最悪の事態に備え、今のうちから投資を抑える動きが出ている」(あるVC首脳)。
リーマン・ショックなど過去の景気低迷時はVCへのリスクマネー供給が細り、投資を凍結したVCもあった。その経験を踏まえ、今後に備えて手元資金を厚くする動きが一部のVCにはみられる。
もう1つがスタートアップの企業評価額が事業の実態以上に高騰していることだ。大企業が本業の競争力向上のためにスタートアップ投資を活発にしていることが、企業評価額上昇につながっている。
最近では、投資しても期待するリターンが見込めないため、VCは投資を見送るケースが増えているそうだ。
投資が止まっているわけではなく、有望なスタートアップには高額の投資が依然続いている。18年10~12月だけみても、資産運用スタートアップのウェルスナビ(東京・渋谷)にはVCのグローバル・ブレイン(東京・渋谷)などが40億円を出資。遠隔操作できるヒト型ロボットのメルティンMMI(東京・新宿)はSBIインベストメント(東京・港)などから約20億円の出資を受けた。
ただ今後は投資先を絞り込む動きが一段と進みそうだ。特に宇宙や新素材開発など研究開発型企業は収益化まで時間がかかるので、出資に慎重になる投資家が増えるとみられる。
「研究開発型のスタートアップには数十億から100億円以上の投資が今後も必要になる。巨額投資できるVCは限られることに加えて、投資家の目は厳しくなりそうだ」(リアルテックファンドの永田暁彦代表)。スタートアップは事業の成長性を一段と明確にする必要がありそうだ。