2019年7月19日(金)

米、遠のく財政再建 トランプ予算は膨張一途

2019/3/12 18:01
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権が11日提示した2020会計年度(19年10月~20年9月)の予算教書では、国防費を中心に歳出の5%増を要求した。年3%の経済成長という楽観シナリオでも、財政赤字は4年連続で1兆ドル(約111兆円)を突破する。20年の選挙を控えて与野党ともに「バラマキ」の機運が高まっており、好況期の財政再建という機会を逸しつつある。

トランプ政権は好況期の財政再建という機会を逸しつつある(8日、ワシントン)=ロイター

「財政赤字は15年以内に解消する」。11日、ホワイトハウスで記者会見したのは米行政管理予算局(OMB)のボート局長代行だった。普段は冗舌なトランプ大統領は沈黙。同氏は16年の大統領選で「任期の8年で政府債務を完済する」と豪語したが、財政再建への関心を失いつつあるようだ。

トランプ政権は20年度予算で国防費を中心に歳出を5%増やすよう要求した。歳出総額は4兆7千億ドルを超えるが、大型減税で税収は抑えられており、歳入は3兆6千億ドル強までしか届かない。金融危機後に膨らんだ財政赤字は、15年度に約4400億ドルまで改善していたものの、再び19年度から4年連続で1兆ドルを突破する見込みだ。

そのため予算教書では、22兆ドルと既に過去最大に達した政府債務が、26年度には30兆ドルを超えると分析した。米国債の利払い費は既に3930億ドル(19年度)と主要国で突出して重いが、27年度には7800億ドルを超えて国防費を上回る異常な規模になる。

もっとも、ホワイトハウスのシナリオはこれでも楽観的だ。予算教書では10年間の経済成長率を平均3%と設定し、歳入もそれに伴い10年で1.8倍に増えると見込む。中立組織の米議会予算局(CBO)は、減税効果が薄れる20年以降は成長率が1%台に低下すると分析。25年時点の税収は予算教書より8%少ない水準にとどまると厳しく予測する。

予算教書では非国防費を中心に10年間で2.7兆ドルの歳出をカットするとしたが、それも「空手形」に終わりかねない。例えば施策の一つに挙げた「ヘルスケアのムダへの対処」。10年で5千億ドルもの歳出カットを織り込んだが、具体的な道筋は全くみえない。

米財政赤字の主因は高齢化による社会保障費の増大だ。予算教書には薬価下げなどコスト抑制策を入れこんだが、それでも医療や年金など「義務的経費」は10年で1.6倍に膨張する。米国は1人あたり医療費が年9000ドル強と日本の2.5倍もかかる。抜本的な制度改正がなければ、財政悪化は止まらない。

米連邦議会は予算教書をたたき台に、今夏にかけて20年度予算の本格審議に入る。ただ、最終的な予算は「ねじれ議会」の影響で、ホワイトハウス案よりも一段と膨張する可能性がある。

「『トランプ予算』は労働者層から富裕層への膨大な所得移転だ」。20年の大統領選へ立候補しているバーニー・サンダース上院議員は11日、早くも批判の声を上げた。同氏ら野党の民主党予備選の候補者は「国民皆保険」の導入を掲げ、財政難にもかかわらず社会保障給付の拡大を公約する。20年度予算の審議でも、民主党は歳出カットではなく社会保障費などの積み増しを求めそうだ。

一方で与党・共和党内は、中国やロシアに対抗するため国防費の積み増し論が強く、トランプ政権も増額を打ち出した。予算審議は与野党案の「いいとこ取り」になりやすく、20年度予算は国防費と非国防費がともに増額になる可能性が高い。

米経済は拡大局面が10年目に突入したが、好況期の大幅な財政悪化は異例だ。ただ、米ギャラップの世論調査では「米国で最も深刻な問題」として財政赤字を挙げた有権者はわずか3%にすぎない。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「財政は持続不可能」と警鐘を鳴らすが、その低金利政策が財政の痛みをマヒさせている。

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