「じじい部隊」解散へ 住民避難の大熊町、守って6年

2019/3/12 10:05
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東京電力福島第1原子力発電所事故で全域の避難指示が続く福島県大熊町で、6年間にわたり町内の見回りに奔走してきた6人の嘱託職員が3月末、役目を終える。事故前に町民の96%が暮らしていた帰還困難区域が元の姿を取り戻せるようにしようと、自ら「じじい部隊」と称して清掃などに汗を流してきた。全町を帰れる場所にする願いを6人は次世代に託す。

用水路の清掃はじじい部隊の日課(福島県大熊町)

じじい部隊は2013年4月、居住制限区域にある坂下ダムの管理事務所に開設された町の現地連絡事務所に詰める嘱託職員の愛称だ。役場を退職したばかりの元総務課長、鈴木久友さん(66)や元出納室長、岡田範常さん(66)ら6人が現地職員を買って出た。

12年末、避難指示区域が再編され、帰還困難域内でも始まった町民の一時帰宅に対応する職員が必要になった。放射線量は依然高く、「若い職員を行かせられない」と鈴木さんらが担った。

引退まで約1カ月となった2月26日。鈴木さんと岡田さん、同じく嘱託職員の加井孝之さん(63)は早朝、チェーンソーなどを車に積み、ダムに近い日隠山への登山道整備に向かった。事故から約8年。県内で人気だった登山道には倒木に加え、道の真ん中にも木が伸びていた。「春に避難指示が解かれたら登山客が訪れる」と木の処理に取り組んだ。

午後も活動は続く。事故前に収穫しながら出荷されずに残った玄米を公民館でバケツに盛ると、町を流れる熊川の河口へ投げ入れた。鈴木さんは「越冬に来る白鳥に毎日餌をやっている。町が復活した時、白鳥が舞い降りることも話題になればと思って」と話す。

帰還困難区域には町民が墓参りや家の片付けで頻繁に訪れる。火がついたままの線香はカラスがくわえて町中に落とすと火事になる危険がある。町を守るため細心の注意を払い、巡回を重ねてきた。

町内各地の用水路にたまる草などのごみ取りも日課の一つ。要所要所にスコップやくわを用意。水路が詰まらないようすくい取る。「用水路の水は火事の消火に重要」と鈴木さん。17年10月に町内で稼働した中間貯蔵施設へ県内各地の除染廃棄物を運び込む大型車両が多く行き交う町内では、一時帰宅中の住民の安全確保も重要な仕事だ。

町内の大川原地区は春に避難指示の解除が見込まれる。地区内には新しい町役場が3月に完成予定で、じじい部隊の役割は現役職員に引き継がれる。「ようやく退職できる」と話す鈴木さんは同時に「私たちの目標までには道半ば」と話す。

現在、町内の帰還困難域内で進む復興拠点の除染は860ヘクタールのみ。中間貯蔵施設の予定地を除く同区域内の約23%にすぎず、町内は「白地」と呼ばれる除染予定のない区域が77%を占める。鈴木さんたちは白地をすべてなくし、全町が帰れる場所にすることを次世代に託す。

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