英のEU離脱、独仏業界団体代表に懸念を聞く

2019/3/11 22:41
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【フランクフルト=深尾幸生、パリ=白石透冴】英国の議会は12日、欧州連合(EU)からの離脱案を再び採決する予定だ。だが承認の見通しは立たない。合意なき離脱や、離脱期日の延期といった見通しも取り沙汰される。ほかのEU加盟国の企業は離脱条件がなかなか定まらない現状にいらだちを強める。経済規模の大きなドイツとフランスの業界団体幹部に準備と見通しを聞いた。

カールマルティン・ヴェルカー独機械工業連盟会長

ドイツ機械工業連盟(VDMA
)のカールマルティン・ヴェルカー会長

ドイツ機械工業連盟(VDMA
)のカールマルティン・ヴェルカー会長

英国の政治家たちがこれほどまでに無責任だということをとても悲しく思う。ただ、いまに至るまで危険な賭けを続けていることに驚いているかというと、そうではない。プレッシャーが強まる最後のタイミング、あるいは期限を延期すればその時期までに決定が下されると信じている。

合意なき離脱になれば(ドイツの)工作機械業界はますます苦しくなるだろう。英国からの部材調達や英国での販売は難しくなる。約3300社の会員企業のうち劇的なプレッシャーを受けていると報告しているのは約70社だ。

こうした企業はすでに製品や部品の在庫を積み増している。しかしこれは永続的な解ではない。彼らは調達網を再構築せざるを得ないし、これは英国に悪い結果をもたらすことになるだろう。

何社かの企業が撤退することは知っているが、英国に投資しようという企業は聞いたことがない。いくつかの企業はすでに縮小に動き始めているが、これは氷山の一角だ。

英政府の方針が決まらない以上、準備のしようがない。私が経営する会社では、あまり英国からは調達しておらず、英国には工作機械や交換部品を売っている。英国にいるサービス担当者に英国のパスポートを持っていない人がいれば何が起きるのかを見てみたい。

しかし税関の書類や納入時間の延長といった類いのものは準備できない。税関の書類がどういったものになるかわからないし、国境管理がどうなるか英国政府自身が準備できていないからだ。

中小企業は役所的な書類を処理するための十分な人がいない。本当に小さい会社では1人で税関手続きの準備や物流の遅れへの対処をすることになり、大きな負担になる。

いまのところ英国からの受注の落ち込みは見られないがいずれ来る。いまは様子見だが、離脱の条件が決まったら影響が顕在化するだろう。

アルバン・マジアール仏中小企業連盟副国際委員長

フランス中小企業連盟(CPME)のアルバン・マジアール副国際委員長

フランス中小企業連盟(CPME)のアルバン・マジアール副国際委員長

英国が欧州連合(EU)から「合意なき離脱」をする場合、フランスの中小企業が特に悪影響を受ける分野は物流業と漁業だ。

EUから英国に渡る物品のうち、8割がフランスを経由する。1日約8500台の物流用車両が英仏海峡を通るが、合意なき離脱となれば、通関手続きが必要になる。1台当たりでは短時間でも、この数では大渋滞になるだろう。駐車場の用意や、検査官がどう準備するのかも不透明だ。

漁業も、英国側での漁獲に規制がかかるおそれがある。出航できない漁船への補償や、英国側で取れた海産物への税関手続きなどが不安要素だ。

仏政府は準備を進めるよう促すが、中身の分からないものに対して準備するのは極めて困難だ。中小企業がつらいのは、政治に働きかける力が弱いことだ。一般的に政治は大企業を優先し、我々は従うだけだ。

約15万社の会員を持つ当連盟は、英国と関係のある事業を洗い出すよう会員に勧めてきた。合意なき離脱の場合に、原材料を切り替えるなどの対応をすぐ取れるようにするためだ。

直接英国に関係がある企業は約1割だが、顧客の顧客をたどっていくと、多くの企業が関係する。そうした企業の一部は、準備が遅れている。

中小企業は単一事業の場合も多い。例えば(英北部の)スコットランドで取れたロブスターをフランスに輸入する会員がいるが、英国が離脱しても(すぐには)切り替えが難しい。ニッチ(隙間)市場を狙っている企業は強みがあるが、大企業よりも製品群が少なく対応に困難を伴う。

英国の離脱期限の延期は、最終的にどんな離脱条件になるか分かっているのでなければ無意味だと考える。

我々が新たな顧客に連絡を取り、必要な行政書類を翻訳し、現地に人を手配するには6カ月でも足りないくらいだ。中小企業は経営者が1人で全てを担っている場合もあり、対応には時間がかかる。

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