2019年3月24日(日)

お礼状、読みやすく簡素に ひな型そのままはNG

コラム(ビジネス)
2019/3/12 11:00
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春は転勤や異動のシーズン。お世話になった人に対して、どんなお礼状なら感謝の気持ちがうまく伝えられるだろうか。形式や冒頭の挨拶文の書き方に迷う人も少なくないだろう。相手の心をつかむ手紙のコツを探った。

お礼状は万年筆を使うと、丁寧さが伝わりやすい

手紙文化振興協会のむらかみかずこ氏

手紙、長く書かなくてもOK

大同生命保険の金沢支社(金沢市)。1月上旬、社員向けに手紙文化振興協会(東京・千代田)によるお礼状の書き方講座が開かれていた。集まったのは営業担当の約60人。ぬくもりを感じさせる手書きのお礼状で顧客とのコミュニケーションを向上させたいと大同生命が企画した。参加した宮川真美さんは「研修を受けて頻繁に手紙を書くようになった。今まで以上に相手との関係が良くなっていると感じる」と話す。

いざ書くとなると長い文章にしなければと悩む人もいるだろう。手紙の書き方を教えるコンサルタントの亀井ゆかりさんは「長く書かなくてもいい。便箋1枚に収まるように読みやすく簡素に書き、相手の時間を奪わないようにすることが重要」と話す。

基本的には冒頭でお礼を述べる。ただ目上の人や礼儀を重んじる相手の場合は季節のあいさつから入ると丁寧な印象を与えることができる。

亀井さんによると、手紙を書く際に避けた方がいいことがある。ひとつは違和感を与える文章を書かないこと。昨日会った人に対して「お変わりないですか」と書くと不自然な印象を持たれる。格言やことわざも使わない方が無難だ。「上から目線だ」ととられる場合がある。

文房具選びも大事だ。手紙関連商品を販売する東京鳩居堂(東京・中央)の高橋雄貴さんは「相手との関係性を踏まえて便箋を選ぶべきだ」と話す。手紙を受け取る人との関係が深くなかったり、趣味が把握できていなかったりする場合は、柄付きの便箋は選ばない。シンプルな白色・無地にするのが無難だという。

万年筆を使えば丁寧に映る

筆記具は万年筆を使うのがポイント。ボールペンで書くとメモ書きのような印象を与えてしまう。万年筆を使えば丁寧に映るほか、文字に温かみが出るという。なかには数百円程度の万年筆もあるため、1本あれば重宝しそうだ。

SNS(交流サイト)やメールでお礼を書くこともあるだろう。デジタルでも手書きと同様、受け取る人の気持ちをくみ取ることが重要だ。

「失礼なのはテンプレート(ひな型)をそのまま使うこと」。日本ビジネスメール協会(東京・千代田)の平野友朗代表理事は指摘する。取引先との会食のお礼は単に「ありがとうございました」と書くのではなく、食事中に気になった会話などについて触れるといい。

デジタルだと冷たい印象を与えるのではと思う人もいるのではないか。平野さんは「読みやすくすれば、柔らかい印象を与えることができる」と話す。行間を空けて漢字を使いすぎないよう心がける。

若い世代の間では絵文字やスタンプを使うことも多いが、ビジネスで使う場合には注意が必要になる。普段から飲みに行く間柄であったり相手が絵文字を使ったりする場合は送ってもいいが、相手との距離感を踏まえて使うことが大事だ。

外国人と働く人も増えている。英語の手紙の添削を手がけているワーズ・アンド・ハーツ(千葉市)の青木多香子さんは「日本語を直訳した英文にしないように」と指摘する。「恐縮です」や「ご迷惑をおかけしますが」といった表現を英語に訳すと不自然だと思われる。欧米ではビジネスレターを書く際、文章はパソコンで打ち最後の署名だけ手書きにすることも多い。忙しいビジネスパーソンはこの手を使ってもいい。

相手の感性に訴えよう

企業向けに手紙の書き方研修を開催している手紙文化振興協会(東京・千代田)のむらかみかずこ代表理事に、お礼状が与える効果や活用法について聞いた。

――お礼状を書くことでどんな利点がありますか。

「相手に自分のことを知ってもらうことができる。どの筆記具を使うのか、どんなデザインの切手を選ぶのかなど、一つ一つの段階で自分らしく工夫を凝らそうという気持ちが大切だ。相手の感性を刺激することができれば、もらった側は送り手に心を寄せ、良好な関係を長く続けられる可能性がある」

「例えば男性の場合、太くて大きな青色の文字で手紙をつづれば、爽やかで元気な人だと印象づけることができるだろう。季節に合わせた便箋や切手を選べば、女性ならではの感性やセンスの良さを訴えられる。読んでもらえる手紙は見た目が9割。見栄えで気持ちの伝わり方も決まる」

――どんなお礼状が喜ばれますか。

「自分の色を出しつつも、相手の趣味や好みを知り、それを生かすといい。切手を選ぶ際に、相手が猫好きならば猫の絵が入った図柄を選べば、心理的な距離がぐっと縮まるだろう」

「文章は短くても構わない。相手に笑顔になってもらうことを一番に考えて書くといい。例えば、自動車販売店の営業担当者が車を購入してくれた顧客に対して手紙を書く際、『ご家族とのおでかけがより楽しくなりますように』といった一言を入れるだけで、相手の心をつかむことができる」

――企業の中でも、手書きのお礼状を従業員に勧める動きが広がっています。

「手紙文化振興協会が企業向けに実施する研修の数も増えている。インターネット経由で買い物をする人が増えるなか、小売業界には手書きのお礼状を送り、ネット販売会社と差別化しようとしている会社がある」

「SNS(交流サイト)の普及で手軽にコミュニケーションを取ることができるようになった。だからこそ、手紙で感謝の気持ちを伝えることに価値が生まれている。スマートフォン(スマホ)で簡単にお礼が言えるのに、わざわざ手紙をかくことで受け取った顧客や取引先は『自分のことを丁寧に扱ってもらっている』という温かい気持ちになるだろう」

(柴田奈々)

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