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震災8年 東北各地で追悼「復興、まだこれから」

(更新)

死者・行方不明者が1万8千人を超えた東日本大震災は11日、発生から8年を迎えた。被災地は荒天となったが、各地の海辺や高台では早朝から手を合わせ、亡き人を悼む姿がみられた。地震発生時刻の午後2時46分、祈りの輪は全国へと広がった。

岩手県

180人以上が犠牲となった岩手県宮古市田老地区。津波の脅威を伝える遺構「たろう観光ホテル」前では住民らが手をつなぎ、地震発生時刻を知らせるサイレンが鳴り響くと同時に海に向かって黙とうをささげた。激しい雨の中、傘をささない人もいた。

津波で当時の町長と職員計28人が犠牲となった同県大槌町の旧役場庁舎跡地では午前中、追悼式を開催。平野公三町長は「皆さんが思い描いた町の実現に向け、町民と一緒に頑張っていきたい」と述べ、献花台に花を手向けた。

旧役場庁舎は震災遺構としての保存か解体かを巡って町民の意見が割れ、訴訟も起こされたが最近、解体が終わった。追悼式は今回初めて町と遺族が合同で開催したが、遺族の参列は10人にとどまった。平野町長は「遺族との対話を続けていきたい」と話した。

9月にラグビーワールドカップ(W杯)の開催を控える同県釜石市鵜住居地区では午前9時、整備中の「うのすまい・トモス」の追悼施設「釜石祈りのパーク」で献花式が開かれ、180人が参列した。

同施設は多くの被害者が出た防災センターの跡地にあり、野田武則市長は「忘れられない、忘れてはならない場所だ」と強調。防災学習施設も併設され、野田市長は「次の世代に語り継ぎ、未来の命を守っていく。ラグビーW杯で訪れる全世界の方々に震災の教訓を発信していく」と述べた。

11日朝に予定されていた同県宮古市の津波避難訓練は荒天で中止となった。12年から毎年この日に実施していたが、中止は初めて。

宮城県

津波で3人の子供を亡くした石巻市の遠藤伸一さん(50)は午後2時46分、自宅跡に建つ3体の地蔵の前でしっかりと手を合わせた。「一番幸せだった場所に」と寄り添うように置かれた地蔵は自宅で津波に遭った長女の花さん(当時13)、長男の侃太さん(同10)、次女の奏さん(同8)を表すという。

8年間支え合ってきた避難所の仲間や亡くなった子供の同級生、支援者ら50人近くが集まり、お菓子や花などを備えた。地震発生時刻には全員で目を閉じ、子や家族らを悼んだ。遠藤さんは「復興に終わりはないけど今日、この人たちの前でなら泣いてもいいかな」と涙をにじませた。

震災当日、多くの人が避難した同県石巻市の日和山公園。同県大崎市から訪れた高橋信行さん(78)は午前6時すぎ、海に向かって合掌した。再建が進む石巻市だが「改めてここから見ても復興はまだこれから。頑張らないと」と話した。

同市の雄勝地区では午前11時半から、市が建立した慰霊碑の除幕式があった。雨の中、遺族ら100人以上が参列。亀山紘市長が「悲劇を繰り返さない伝承の場所にしたい」とあいさつした。

海を見下す高台に設置された碑の台座には犠牲者の名前や被災状況が刻まれている。参列した同市の阿部糸子さん(67)は地区内で母と姉を亡くした。「今までこうして追悼できる施設がなかったからうれしい。何度も来たい」と語った。

津波で200人弱が犠牲になった仙台市若林区の荒浜地区。海岸沿いはいまだ荒れ地が目立つ。同区の主婦、遠藤香織さん(30)は当時働いていた老人ホームで被災。自身は屋上に逃げて助かったが、逃げ遅れた利用者や職員らが津波にのまれ、帰らぬ人となった。

慰霊碑に花束を添え、手を合わせた遠藤さんは「日常は少しずつ戻ってきた」と実感する。現在は5歳と3歳の2児の母だ。「2人とも震災を知らない世代。大きくなったらこの場所に連れてきて、震災の記憶を引き継ぎたい」と話した。

福島

全町民の避難が続く福島県大熊町は11日午後、避難者が最も多く住むいわき市内で、震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故以降に亡くなった町民の合同追悼式典を開いた。避難生活中に父親を亡くした猪狩松一さん(71)は「父は事故後、避難場所を転々とした。つらい思い出だが、町が供養してくれるのなら」と参列した。

猪狩さんは現在いわき市在住。汚染された場所の墓に入れるのは申し訳ないと墓も市内に移した。町内の自宅は除染計画が立たない。「無理やり避難させられ、帰還も諦めさせられようとしている」。わだかまりは今も消えない。

大熊町内で今春、避難指示が解除される見込みの大川原地区には新役場庁舎が完成した。解除とともに業務が始まる。

4月20日に全面再開するサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)では県民の追悼と復興への思いをろうそくの灯に託す「キャンドルナイト」が催された。

いわき市の名和佑起さん(30)は妻や娘(1)と参加し「浜通り元通り 感謝」と書き込んだ。「あっという間の8年だったが、食べ物もすべてがなくなった恐怖は子供たちには経験させない」と誓った。

3月11日の被災地や各地の様子を写真で追います

午後7時1分 宮城県石巻市

午後5時57分 宮城県名取市

午後5時15分 仙台市若林区

午後2時46分 東京・銀座

午後2時46分 東京・銀座

午後2時46分 仙台市若林区

午後2時46分 福島県いわき市

午後0時5分 宮城県石巻市

午前11時37分 福島県富岡町

午前11時26分 仙台市若林区

午前10時57分 福島県大熊町

午前10時22分 仙台市若林区

午前10時19分 福島県浪江町

午前9時37分 宮城県石巻市

午前9時2分 宮城県石巻市

午前8時48分 宮城県石巻市

午前8時22分 仙台市若林区

午前8時 岩手県大槌町

午前7時48分 宮城県石巻市

午前7時30分 仙台市若林区

午前7時2分 岩手県大槌町

午前6時11分 岩手県山田町

午前5時57分 仙台市若林区

午前5時55分 福島県浪江町

(写真部・笹津敏暉、樋口慧、野岡香里那、今井拓也)

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東日本大震災から11年、復興・創生期間がほぼ終了した被災地。インフラ整備や原発、防災、そして地域に生きる人々の現在とこれからをテーマにした記事をお届けします。

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