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患者宅で治験、期間短く ネットでデータ送信

スイスのノバルティスなど世界の製薬大手が海外で、患者宅での臨床試験(治験)に取り組み始めた。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術で血圧などのデータを病院に送る。通院が不要なため参加率が高く、3~7年の治験期間が1割短くなると見込まれる。新薬開発はスピード向上とコスト削減が課題で、効率化の手段として広がりそうだ。

「バーチャル治験」を導入

患者の自宅での治験は製薬業界が「バーチャル治験」と呼んで導入し始めた。患者はスマートフォンで注意事項を理解し、参加を申し込む。貸し出される無線付き計測器やウエアラブル端末で血圧や心拍などのデータを取り、病院へ送る。

手順通りに実施するよう参加者に誓約書で求めた上で、予定通りに進行しているかシステムが判断。異常があれば医師らが患者に注意喚起する。

ノバルティスは21年3月末までの3年間に世界で10件実施する。すでに、激しい痛みに集中的に襲われる群発頭痛や肝炎の分野で着手した。

同社やフランスのサノフィが17~18年に医療システムの米サイエンス37と提携し、バーチャル治験を実施している。米メディデータもシステムの提供を始めている。

ノバルティスでデジタル分野を担うブライアン・マクドウェル氏は「治験の参加率が3倍高まった」と話す。従来は通院する必要があるため被験者が集まりにくく、治験の8割が計画より遅れるといわれる。バーチャル治験はウエアラブル端末で働きながら測れる。

医薬コンサルティングの米IQVIAは、3年かかる治験なら1割以上にあたる4~5カ月短くなるという。サイエンス37は3割の短縮を目指す。バーチャル治験は実施する前に国に相談しながら進める必要がある。

申請される治験の2割に

日本でも実用化が近づいている。米ファイザー日本法人は年内に始める計画だ。すでにネットで参加の同意を得る仕組みを整えた。今は家に薬を送ったりサンプルを集めたりする物流やシステムを固めている最中。武田薬品工業など日本勢も関心を持っている。

米調査会社フロスト&サリバンは今後1年で、世界で新たに申請される治験のうちバーチャル治験を使う件数が2割に及ぶとみる。患者が各地に分散している希少疾患に需要がある。従来手法と組み合わせるハイブリッド型治験が増える。

世界の製薬会社の研究開発費用は治験が大半を占め、増加傾向だ。コスト削減が課題で、効率化の需要は大きい。米調査会社グランドビューリサーチは、バーチャル治験などIT(情報技術)を使う治験の世界市場規模が、25年に1兆3千億円になると予想している。

新薬候補として探し出した化合物が国に申請できるまでに育つ確率は約2万5千分の1で、低下傾向にある。製薬会社は基礎研究の段階でスーパーコンピューターによる候補探しを進めてきた。

ノバルティスのマクドウェル氏はそれでも製造業などに比べ「デジタル技術の導入が遅れた」と話し、治験分野の取り組みを進めるという。コスト削減と開発の迅速化は各社共通の課題で、ITの活用が進みそうだ。

(野村和博)

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