2019年3月25日(月)

暴言・無視・過大ノルマNG 企業にパワハラ防止義務

経済
コラム(ビジネス)
2019/3/8 11:37
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職場で強い立場にある人が嫌がらせをするパワーハラスメント(パワハラ)への対応を企業が迫られている。政府は8日、パワハラを防ぐ措置を企業に義務づける法案を閣議決定した。今の通常国会で成立すれば、来春には相談窓口などを設ける必要がある。パワハラは社員の人材流出や仕事への意欲低下につながるため、企業は対応を急いでいる。

政府はパワハラの防止措置を労働施策総合推進法などの改正案に盛り込んだ。パワハラは上司などの優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で働く環境を害することと明記した。企業には相談窓口やパワハラをした社員の処分内容を就業規則に設けるよう義務づける。相談した人のプライバシーの保護なども必要になる見込みだ。

法律で対策が義務となるパワハラは具体的にどのようなものか。厚生労働省は法律の成立後につくる指針で示す。ベースになるのが、同省がまとめたパワハラを巡る6つの行為類型だ。

まずは暴行・傷害、脅迫・ひどい暴言など精神的な攻撃、仲間外し・無視の3つ。これらは通常、業務に必要とは考えられない。裁判では暴言など精神的な攻撃型のパワハラを認定していることが多い。具体的には「給料が高すぎる」や「あほでも知っている」といった暴言や、あいさつしても返事をしないといった行為だ。

判断が難しいのは業務の過大要求、業務の過小要求、私的なことへの過度な立ち入りという残り3つの行為だ。裁判で認定されたものには、先輩が他の従業員の仕事を後輩に押しつけ、徹夜で仕事をさせた事例がある。過小業務は、接触事故を起こしたバス運転手に、営業所長が真夏に期限を示さず除草作業を命じたという例がある。

経済団体など企業側はパワハラの概念が広くなると上司が萎縮し、指導ができなくなるとして審議会などで厚労省に慎重な対応を求めてきた。

だが裁判ではパワハラをした従業員だけでなく、企業も訴えられて問題を放置した責任を問われたケースも少なくない。2017年度の労働局への相談では「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万2000件を超える。どの企業にとっても対応は急務だ。

厚労省によると、既に相談窓口を設置している企業は7割を超える。ただ設置だけにとどまり、未然の防止への実効性が低い企業も少なくない。大手を中心により積極的にパワハラを未然に防ごうという機運は高まっている。

電通は違法残業事件を機に、17~18年にパワハラを含むハラスメント防止の施策を20以上実施した。ハラスメントの基礎知識に関する冊子を製作して全社員に配布したほか、職務階層別に必要な知識を伝える研修も実施した。ハラスメントに対する意識調査や理解度テストなども実施した。

社員の心身の健康に関して、家族からの相談も受け付ける「ファミリーライン」を設置するなど、社員の異変の早期発見に努める。山本敏博社長は「社員の心身の健康が経営の根幹だ」と話す。

カルソニックカンセイは毎年職場ごとに、パワハラやセクハラなどで問題提起と解決方法を出した優秀者を表彰している。サービス残業などで残業を過少申告をさせないシステムを構築するなど、現場が主体的に動く対策をとる。「パワハラ対策法案など新たな法令改正には、迅速に対応する」と新たな制度設計にも取り組む。

人材サービスのエン・ジャパンが2月にまとめた調査によると、35歳以上のミドル層で8割以上がパワハラを受け、このうち35%が結果的に「退職した」と回答した。パワハラが人材流出の要因になっていることが浮かび上がった。

同社の「人事のミカタ」の手塚伸弥編集長は「パワハラ発覚が氷山の一角になっている状態では、改善は見込めない。積極的に被害者を発見する取り組みや、加害者になりやすい管理職らへの教育に引き続き取り組むべきだ」と指摘する。

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