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「損が気にならない」積み立て投資 振れ大きな投信で

QUICK資産運用研究所 清家武

写真はイメージ=PIXTA

積み立て投資をする個人投資家が増加している。税制優遇制度を背景に、日本人の10分の1程度が実施している計算だ。一度の投資額が少ないため損得が気にならない点も見逃せない。一括で投資する場合に比べ、どのような特徴があるか。どんな投資信託が積み立て向きなのか。具体的な例を交えて見ていこう。

広がる積み立て投資、税制優遇も後押し

2017年1月から、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」がスタート。確定拠出年金の対象者が、公務員や主婦などへ拡大した。個人型と企業型のDCを合わせると、加入者は800万人程度。DC専用の保険や預金で運用する加入者もいるが、DC加入者の多くは積み立て投資をしている。

18年1月からは、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)も始まった。1年以上が経過し、つみたてNISAの口座数は100万を超えた。一般口座の積み立て投資の口座数は200万程度ある。ここ数年間のインターネット証券の台頭が大きい。DCの800万人とつみたてNISAの100万人、一般口座の200万人を合わせると、延べで1100万人が積み立て投資をしている。単純にいえば、日本人の10分の1は積み立て投資をしていることになる。

行動経済学でいうと、人間は資産運用に向いていない。人間は、投資でもうけたときの喜びより、損をしたときの苦痛のほうが3倍大きい(A)。これは、人間の脳の構造の問題だが、喜びより苦痛のほうが、記憶に刻み込まれるからだ。特に、日本人は農耕民族であり蓄えがなくなるリスクを回避する傾向が強いため、世界平均より投資で損をしたときに感じる苦痛が大きいようだ。

資産運用は修行ではない。苦しみながら運用すべきではない。積み立て投資なら、その問題をある程度解決できる。積み立て投資の場合は、毎月の1回あたりの投資金額が小さいため、「損をしている」「もうかっている」という感覚が小さく、気にならずに投資できる。この「気にならない資産運用」は、精神的な負担が軽く日本人に向いているといえる。

 一括投資の場合でも、時間分散の投資手法は改めて重要視されている。ここ数年の市場で厄介な点は、既に売られて、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)からみて十分に割安になった状態からさらに売り込まれてしまうこと。コンピューターの超高速取引で、市場が一方向に極端に傾きやすくなっている。プロのファンドマネジャーやトレーダーは、市場がオーバーシュートした時、一度に全ての資金で買うのではなく、何回かに分けて投資するケースが多くなった。

投信を積み立てれば、購入単価は安定化

積み立て投資は、ドルコスト平均法を利用した投資方法だ。ドルコスト平均法では、毎月、一定金額を投信などに継続投資する。価格が高い月は少なめの口数、価格が安い月はより多くの口数を購入できることから、平均購入単価のブレを平準化できる。その結果、多くの口数を購入することが期待できる。

積み立て投資の平均購入単価はどうなるか。「全ての投信5500本の平均値」の推移と、積み立て投資の平均購入単価を比べた(B)。この20年間の投信の価格が大きく上昇や下落しているにもかかわらず、積み立て投資の平均購入単価は比較的安定していることが分かる。

具体的に、投信に20年前から積み立て投資をした場合と一括投資した場合について、シミュレーションした(C)。例えば、投信に一括投資する場合、00年のITバブルや07年のサブプライムローン・ショック前などの価格が高い時に購入すると、その後の値下がりで大きな損失をこうむる。一方で、積み立て投資は、平均購入単価が安定しており、その損失額が限定される。

20年間の積み立て投資の効果をみると、積立総額の240万円に対して、積み立て投資の時価は約340万円となり、100万円のプラスになった。

リスクをとって20年前に一括投資した場合の時価は約337万円となり、積み立て投資した場合の収益と同程度となった。一括投資はリスクをとって運用し、相場下落時は精神的なストレスを負う。積み立て投資は、ともすれば資産運用していることさえも忘れて、ゆったり運用した結果だ。

 積み立て投資は、一括投資より投資金額が市場変動にさらされている期間が短く、その分リスクも小さい。理論的には、20年間の投資額の平均は120万円になる。一括投資が20年前に240万円分投資しているのに対し、積み立て投資の投資金額が240万円に達するのは最後の1カ月だけだ。

値動きのある投信が積み立て向き

具体的な投資信託で積み立て投資の成果をみてみよう。日経平均株価に連動する投資成果を目指す「インデックスファンド225」(運用会社:日興アセットマネジメント)に、10年間毎月1万円、合計120万円投資したケースでは、積み立て投資の時価は205万円になった。85万円のプラスだ(D)。

積み立て投資はある程度の値動きがある投信のほうが向いており、平均購入単価が下がりやすい。国内株式型の投信の標準偏差(収益のばらつき)は15%程度で、ボラティリティー(変動率)としては積み立て投資に向いている。実際、ネット証券の積み立て投資ランキング上位には、日経平均連動型のインデックスファンドが多い。

同様に国内債券で運用する「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」(運用会社:大和証券投資信託委託)に、10年間毎月1万円、合計120万円投資したとき、時価は127万円になった。わずか7万円のプラスだ(E)。

国内債券型の投信は値動きが小さいので、平均購入単価が下がりにくく、購入口数が増えない。標準偏差は1.5%程度とボラティリティーが小さすぎるため、積み立て投資には向いていないといえる。

積み立て投資は、「ドルコスト平均法」を活用することで平均購入単価が下がり購入口数が増加するので、安定的な収益が期待できる。何より「気にならない資産運用」は、精神的な負担が小さく、安定的な気持ちで投資できる。積み立て投資も一括投資も、短期の相場変動に一喜一憂することなく、長期的な観点で投資することが大切だ。

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