ワールド碁2019が18日開幕 井山、悲願の世界一挑む

囲碁・将棋
2019/3/9 2:00
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囲碁の世界ナンバーワンを決めるワールド碁チャンピオンシップ2019(主催・日本棋院、特別協力・日本経済新聞社)が18~20日、東京・市ケ谷の日本棋院で開かれる。国内五冠を持つ井山裕太王座(29)は悲願の国際戦優勝を目指し、大会2連覇中の韓国・朴廷桓(パクジョンファン)九段(26)や中国トップの柯潔(かけつ)九段(21)らと争う。ほかに日本代表として張栩名人(39)、韓国の申眞ソ(シンジンソ)九段(18)も出場。今大会で導入された国際予選で一般枠を勝ち抜いた中国の江維傑(こういけつ)九段(27)、廖元赫(りょうげんかく)七段(18)、40歳以上のシニア枠を突破した韓国の劉昌赫(ユチャンヒョク)九段(52)を加えた計8人がトーナメントに臨む。

■先頭で日本引っ張る 井山裕太 王座

井山裕太 王座

井山裕太 王座

世界のトップ中のトップしか出ない大会に3年連続で出場でき、とても光栄だ。前回は準優勝だったが、決勝の碁は厳しい内容だった。なんとか昨年よりいい戦いができるように準備したい。

今回導入された国際予選は会場で一部観戦した。世界戦常連のトップ棋士がこれほどの規模で集まる大会はほかにない。その光景にとても刺激を受けた。日本の囲碁界にとっても絶好のチャンスだっただろう。

しかし一般枠では日本勢が1回戦で全員敗退するという厳しい結果だった。それぐらい中国、韓国とはっきりした差があることを受け止めなければならない。勝機のある対局もあったが、一局を勝ちきる力が足りないのだろう。世界での経験が浅い棋士も少なくないので、この大会をスタートラインとして今後に向かわないといけない。

昨年の前半は国際戦で結果を残したいという思いが焦りにつながって調子を崩し、一時期は世界で戦える内容の碁を打ってなかった。しかし夏ごろからは少しずつ手応えを感じる対局が増えてきている。最近、パソコンを導入して人工知能(AI)による囲碁ソフトで本格的に研究し始めた。日本の若手のトップクラスが月1回ほど集まって、世界を視野に入れた研究会も続けている。大会でも私が日本を先頭で引っ張っていくような戦い方をしたい。

■中盤戦 読みで勝負 朴廷桓 九段

朴廷桓 九段

朴廷桓 九段

第1回大会から2連覇しており、相性の良さを感じる。前回からの1年では韓国の国手山脈戦や中国の賀歳杯などで優勝したが、満足いかない棋戦もあった。開催国や環境が異なれば勝てないこともあるが、ベストを尽くしてきたので後悔はない。

1年前に比べると、碁盤を離れてパソコンで勉強することが増えた。最近のAIには2子を置いてもなかなか勝てないレベルにある。

誰もがAIに学ぶので序盤が同じような布石ばかりになっているのは残念だ。必死で考えて個性的な布石を編み出しても、すぐにAIで研究されて対策を立てられて効果がなくなってしまう。正解のない序盤はAIの手順を覚え、中盤の大事なところに時間を割いてじっくり考えられるようにしている。

中終盤は経験よりも読みの力が大切になるので、若手が活躍する傾向は今後も強まると思う。読みをしっかり鍛えれば、棋士の層が薄い韓国、そして日本も間違いなく強くなれる。

今回の大会で導入された国際予選でも中国が強かったが、とても面白い試みだった。変化があるのは良いことだ。出場者のレベルがとてつもなく高いので、私が参加したら落ちていたかもしれない。もちろん本戦出場者は手ごわい相手ばかりだが、コンディションを整えて臨みたい。

■厳しい戦い 意地見せる 張栩 名人

張栩 名人

張栩 名人

世界戦に出ることは、もうないのでは、と思っていた時期もあったので、久々にチャンスを頂いて本当にありがたい。

ただ、誰と当たっても厳しい戦いになるのは間違いない。中韓ではAIを使った集団研究が進んでいて、日本勢との差はむしろ広がっている印象すらある。

その中で、自分の力を出せる碁に、どうもっていくか。序盤の研究がなかなか追いつかない面もあるが、何とかいい碁を打って意地を見せたいと思っている。

■日韓勢の活躍にも期待 柯潔 九段

柯潔 九段

柯潔 九段

昨年は中国ランキングトップから滑り落ちたこともあるが、12月の韓国・三星杯、1月の中国・百霊杯と国際棋戦で優勝した。私の状態は特に変わらないが、結果は出ている。

この大会に導入された国際予選では、一般枠の決勝は2つとも中国勢同士の対決だった。日本と韓国の棋士はもっと頑張らなければならない。

前回大会では準決勝で朴廷桓九段に敗れた。今大会では一局一局、目の前の対局に集中して、全力を尽くしたい。


■結果残し真のトップへ 申眞ソ 九段

申眞ソ 九段

申眞ソ 九段

韓国ランキングで朴廷桓九段を逆転して1位になることもあるが、自分ではまだトップとは思っていない。対局中にも自分はまだまだだと実感する局面がたくさんある。努力して結果を残し、本当の第一人者になりたいと強く願っている。

主要な国際棋戦での優勝がなく、最近も決勝で負けてチャンスを逃してしまった。本当に強い棋士は10代で世界を制していることを思うと、私に残された時間は長くはない。限られたチャンスをつかみたい。


■国際予選 日本勢、一般枠20人が初戦敗退

日本、中国、韓国、台湾のトップ棋士が参加した(1月、東京都千代田区)

日本、中国、韓国、台湾のトップ棋士が参加した(1月、東京都千代田区)

前回まで各国ランキングのトップが出場してきた大会だが、今回から日本、中国、韓国、台湾の棋士による国際予選が導入された。一般枠2つ、40歳以上のシニア枠1つの計3枠を巡って、総勢89人の棋士が1月24~29日、東京・市ケ谷の日本棋院で争った。

一般枠2つには日中韓の各20人と台湾4人の計64人が挑んだ。中韓は原則ランキング上位者が出場。中国の陳耀燁(ちんようよう)九段(29)、謝爾豪(しゃじごう)九段(20)、韓国では李世●(石の下に乙)(イセドル)九段(36)ら、若手からベテランまで世界制覇の経験者がずらりと並んだ。

江維傑 九段

江維傑 九段

日本はエントリー制の国内予選を実施。許家元碁聖(21)や一力遼八段(21)、関西棋院の村川大介八段(28)ら国内トップ棋士20人が一般枠に挑戦したが、全員が1回戦で敗退した。韓国勢も準決勝までに敗退し、一般枠の決勝戦は2枠とも中国勢同士の戦いとなった。

この国際予選の直後に韓国のLG杯で優勝した楊鼎新(ようていしん)七段(20、現九段)を決勝で破ったのは江維傑九段。過去に国際戦の優勝経験はあるが、20代半ばを過ぎて失速気味だった。「予選を通じて自分らしく戦えたことに満足している。自分が勝ち抜けるとは思っていなかった」と喜んだ。

廖元赫 七段

廖元赫 七段

もう1枠で、時越(じえつ)九段(28)を時間切れで破ったのは18歳の廖元赫七段。中国新人王戦で優勝し、世界戦でも安定して上位進出している期待の新鋭のひとりだ。「本戦メンバーはみんな強すぎる。しっかり準備したい」と気を引き締めた。

シニア枠には日本12人を含む計25人が出場し、ベスト4の3人を日本勢が占めて期待を集めた。しかし決勝で結城聡九段(47)が韓国の劉昌赫九段に敗れ、予選突破はならなかった。


劉昌赫 九段

劉昌赫 九段

元世界王者の劉九段は、昨年まで韓国棋院の事務総長を務めて休場していた。「休んでいる間にAIの影響で囲碁が変わって、序盤はからっきしダメだった。本戦ではベテランの味を見せたい」と意気込んでいた。


■トーナメント展望 「8人の実力拮抗」 一力遼 八段

一力遼 八段

一力遼 八段

トーナメントの展望について、中国国内リーグにも参戦し、各国事情に詳しい一力遼八段に聞いた。=文中敬称略

ハイレベルな戦いが予想される中、優勝争いの中心は、やはり大会2連覇中の朴と、中国代表の柯だろう。

朴は年末年始、調子は良くなかった。韓国内で、あまり有名でない棋士にも負けていた。しかし、2月初めの賀歳杯という世界戦では、柯の凡ミスに助けられて優勝。本調子でなくても結果を出せることに運の強さを感じたし、もともと安定感では定評がある。

一方の柯だが、調子自体は悪くない。昨年12月の三星杯、今年1月の百霊杯と、世界戦を立て続けに制した。まだ若いが、他のトップ棋士にはない一種のカリスマ性のようなものも感じる。

韓国代表の申も、韓国内で朴とランキング1位を争う実力者。世界戦の優勝経験がないのが不思議なくらいで、当人も期するものがあるはずだ。

予選の一般枠で勝ち上がった江と廖は、中国のトップグループ二十数人の中の2人。今年のLG杯の優勝を争った楊鼎新と時越をそれぞれ予選決勝で破ったことが実力の高さを示している。

シニア枠を突破した劉は文字通りのレジェンド。しばらく休止していた棋士活動を再開したばかりで結果を出した。朴らを指導、監督しながら自らも学んだのだろう。

迎え撃つ日本勢では、久しぶりに世界戦に登場する張に注目している。昨年秋に名人を奪い返したあたりから、時間の使い方や切れ味の鋭さがよみがえってきた。本人も相当、気合が入っているのではないか。

国内五冠を有する井山だが、このところ世界戦で結果が出ておらず、「今度こそ」の思いが強いだろう。序中盤での独自の工夫を重視するだけに、世界戦の中では比較的長い3時間の持ち時間は有利に働くかもしれない。

今やトップ棋士はAIの勉強が中心。このため似たような布石に始まり、結局は未知の局面になってからの力勝負になる。実力差がないだけに、誰にもチャンスはありそうで、トーナメントの組み合わせが一つのカギとなりそうだ。

・対局の模様は特設サイト
http://igooza.nikkei.co.jp/worldGo/)でライブ中継します
・「囲碁・将棋チャンネル 囲碁プレミアム」
https://www.igoshogi.net/igopremium/)で大盤解説つきの生放送があります

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