2019年5月24日(金)

南アフリカ、18年0.8%成長 浮沈握る国営電力改革

中東・アフリカ
2019/3/5 21:54
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【イスタンブール=佐野彰洋】南アフリカ政府統計局は5日、2018年の実質国内総生産(GDP)が前年比0.8%増だったと発表した。10~12月期は農業や製造業がけん引し、前期比年率で1.4%増だった。前政権の汚職や失政のツケは重く、当面は2%以下の低成長が続く見通し。国営電力の再生など構造改革の成否がアフリカ最大の工業国の浮沈を左右しそうだ。

電力の途絶えた店内。計画停電は経済活動を停滞させている(2月12日、ヨハネスブルク)=ロイター

ヨハネスブルク近郊ソウェトの運転停止した発電所(2月20日)=ロイター

政府見通しの0.7%を上回ったことで、通貨ランドは対ドルなどで上昇した。10~12月期は天候不順による干ばつから立ち直った農業が7.9%、石油、化学、自動車などが好調だった製造業も4.5%伸びた。通年では金融・不動産や政府部門が寄与した一方、主力の鉱業は不振が続いている。過去に遡った修正値も同時に公表した。

5月8日に総選挙を控え、今回の統計結果は短期的にはラマポーザ政権の追い風となりそうだ。ただ、黒人解放運動を率いた故マンデラ元大統領が議長を務め、1994年以降、政権与党の座を維持してきたアフリカ民族会議(ANC)への支持は退潮傾向にある。汚職のまん延や低成長に失望した若年層のANC離れが進んでいるためだ。

汚職問題を抱え18年2月に退陣したズマ前大統領から職を引き継いだラマポーザ大統領は経済再建に向けた構造改革路線を推進する。その本丸とみられているのが国営電力エスコムの再生だ。

国内の電力供給の9割以上を独占するエスコムでは多額の資金が使途不明になる一方で、老朽化した石炭火力発電所の維持や更新に必要な投資がされなかった。過去10年で電力販売量はほぼ横ばいのまま。19年2月には08年以来となる大規模な計画停電に踏み切った。

ヨハネスブルク近郊で鶏肉販売店を営む女性は「冷蔵庫の停止に伴う品質悪化が怖く少量しか仕入れられない。コスト高になっている」と地元メディアに苦境を語った。計画停電は特に自家発電の備えがない中小企業の打撃となっている。

エスコムの債務残高は約4200億ランド(約3兆3000億円)に達し、大半に政府保証が付く。放漫経営の高コスト体質で、政府の返済支援なしには立ち行かない。

2月20日の財政演説でムボウェニ財務相は「現在のエスコムに資金をつぎ込むのはふるいに水を注ぐようなものだ」と述べた。3年で690億ランドを融資する条件として、「最高再建責任者(CRO)」の選定を条件として突きつけた。

これに先立ちラマポーザ氏はエスコムを発電、送電、小売りの3社に分割する方針を表明した。民間の資金やノウハウを導入することで電力市場での競争環境を整備する狙いとみられる。人員削減を警戒する労働組合に加え、ANCと連携する政治勢力の一部も反対に回る。

大手格付け機関で唯一、南アフリカ国債の投資適格級格付けを維持するムーディーズ・インベスターズ・サービスは「明確な解決策が示されない限り、エスコムが政府財政悪化のリスクとなっている」と指摘する。

金融市場ではムーディーズが3月末に格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げ、改革の進捗次第では年内にも投機的水準に格下げする可能性がささやかれる。

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