2019年5月26日(日)

今日も走ろう(鏑木毅)

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今も心の支えに 親友は何人いるだろうか

2019/3/7 6:30
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アメリカの思想家、ヘンリー・ブルックス・アダムズは「生涯の友は一人でたくさん。二人では多い。三人などまずありえない」と言う。親友と呼べる人物は何人いるだろうか。私自身は生来の人付き合い下手。なかなか人と深くは付き合えないのだが、一人は間違いなく親友だと言える人がいる。

今から25年ほど前、公務員だった私の仕事は細かな数値を扱うもので、学生時代から数字全般に苦手意識のあった私にとって苦行だった。そのためミスをしないよう緊張感を持ち細心の注意を払っていたが、それでも何かと問題を起こしていた。

私は生まれつき人付き合いが苦手だ(長野・志賀高原でのトレーニング)

私は生まれつき人付き合いが苦手だ(長野・志賀高原でのトレーニング)

ある朝、仕事はできるが職場では恐れられている先輩からものすごい勢いで椅子を蹴り上げながら怒鳴られた。もちろん、ミスをした自分が悪い。ただ、そのような叱責を受けるのは生まれて初めてで、正直むっとした。だがその先輩は深夜まで私の仕事の穴埋めを手伝ってくれ、この一件から彼との距離はぐっと縮まった。

世のサラリーマン同士の雑談は仕事や家庭の愚痴が大半を占めるらしいが、互いに前向きな性格なのか昼食をとりながら照れずに夢を語れる貴重な間柄だった。折に触れ彼は、君はさまざまな可能性を持っているとも言ってくれた。そう言われるとお世辞かもしれないと思いつつも、もしかしたら私には何かすごい力が宿っているのではないかと根拠のない自信さえ芽生えた。

この言葉の影響もあったのか40歳で公務員を辞し、プロのトレイルランナーになると決心した。家族以外で初めて心の内を打ち明けた際、どのような反応をされるかドキドキした。彼はさすがにしばらくうなったものの最終的には「わかった。どんなことがあっても5年間は俺がサポートするよ。思い切ってやってみろよ」と背中を押してくれた。公務員は真面目に勤めていればセーフティーネットで守られている職業。長年のぬるま湯に慣れた私が今後荒波を越えられるか心配だったようだ。

それから10年が経過した。相変わらず言いにくいこともそれとなく指摘し、またボランティアとしても手助けしてくれる。彼の付き合い方は独特だ。私のレースの結果が良ければあえて距離を置き、結果が悪かったり故障で落ち込んだりしていると電話をくれる。私の件には触れることなく自身の愚痴をこぼし、とりとめもない会話を続けるうちに心がほぐれてくる。こんなあうんの呼吸を心得ている。

彼は人一倍仕事ができてリーダーシップもあり、現在は県の幹部として活躍している。役職が上がるにつれ気苦労は絶えず愚痴を言うものの常に前向きで夢を語るところは今も変わらない。考えてみれば、趣味も育った環境も考え方も違い、何一つ共通点はない二人。だが互いに高めあい、さりげなく親身になり、寄り添ってくれる彼は無二の親友だ。私の人生はこんな大切な友によっても支えられている。

(プロトレイルランナー)

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