野村HD、永井氏が続投 白紙に戻った後継レース
収益改善を優先、異例の長期政権に

2019/3/5 15:32
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野村ホールディングス(HD)は5日、永井浩二グループ最高経営責任者(CEO、60)が続投する人事を発表した。今期の10年ぶりの赤字転落がほぼ確実な情勢のなか、株主などからはトップの人事刷新を求める声もあった。それでも永井氏が在任7年を超える異例の長期政権を決めたのは、自ら低収益の体質を早急に改善させることを優先したためだ。

永井浩二 野村ホールディングス グループ最高経営責任者(CEO)

永井浩二 野村ホールディングス グループ最高経営責任者(CEO)

森田敏夫氏(57)と奥田健太郎氏(55)の2人の共同グループ最高執行責任者(COO)も留任する。後継レースはいったん白紙に戻り、構造改革で力を発揮した人物が新たな候補に躍り出る可能性が出てきた。

永井氏は12年に発覚した公募増資インサイダー問題を受けてグループCEOに就いた。アベノミクスの追い風もあり、就任時に70兆円弱だった預かり資産残高は110兆円を超えた。17年3月期には課題だった海外事業の黒字化も実現させた。

ところが19年3月期に落とし穴が待っていた。火柱は法人部門から上がった。18年7~9月期に住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売を巡る米司法省への多額の和解金が発生。同10~12月期には過去に買収した米リーマン・ブラザーズなどのれんの減損も迫られ、18年4~12月期に1000億円を超える最終赤字につながった。

頼みの個人営業部門も構造不況の様相を呈する。昨年来の株価の乱高下で個人が投資への慎重姿勢を強め、18年10~12月期も大幅な減益を余儀なくされた。顧客本位の営業改革を掲げ、預かり資産を重視してきたが、収益性の低下に歯止めがかからない。

永井氏は今年の社長交代を念頭に、2人のCOOを競わせてきた。米州地域ヘッドの奥田氏は海外、野村証券社長の森田氏には国内で強い権限を与えた。ところが、本命の2人が業績上の数字を達成できず、永井氏がCEOを託す大義名分がなくなってしまった。

市場の永井体制への評価は厳しい。野村HDの株価は17年末比で34%下落しており、日経平均株価(5%安)と比べて下げが際立つ。永井氏は一気に世代を若返らせる手段も検討したようだが、「全体を見渡せる経営人材が育っていない」(野村幹部)との意見が指名委員会の議論をリードした。結局、「ポスト永井は永井」という苦渋の決断につながった。

今回の人事では奥田氏がニューヨークから東京に戻り、副社長として法人部門の立て直しに本腰を入れる。グループ戦略を担当する新井聡執行役員(53)を営業部門長に据えるなど2COO以降の若い世代にもチャンスを与える布陣とした。かつてより弱まったとはいえ、信賞必罰が野村の文化。「来年以降の社長レースは参加者が増えた」(野村幹部)との見方は多い。

新たな布陣で優先するのが4月に発表する構造改革だ。個人・法人ともにコスト削減を徹底する方針。営業部門が売買した商品の記録や決済をおこなうバックオフィスや、営業とバックをつなぐミドルオフィスのコストも聖域なく見直す。

新時代への対応も急ぐ。アルゴリズム取引が市場を席巻するなか、部門横断のデジタル対応組織をつくる。これまで部門ごとに情報技術(IT)活用を考えてきたが、新組織で全体最適のプランを練り上げる。

永井氏の在任期間は野村を世界有数の証券会社に押し上げた「おおたぶ」こと田淵節也氏(78年10月~85年12月)の7年2カ月をまもなく抜く。実力経営者として痛みを伴う改革をどこまで断行できるのか。続投を決めた永井氏が新たな野村像を示せなければ、復活も遠のくだけだ。(関口慶太)

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