米ウーバー・リフト上場へ ライドシェア経済圏が拡大

2019/3/4 23:42
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米ライドシェア2位のリフトが米ナスダック市場への上場申請を米証券当局に届け出た。米最大手のウーバーテクノロジーズも2019年内の新規株式公開(IPO)が見込まれており、両社を合わせた時価総額は1400億ドル(15兆4000億円)超になると報じられている。これは現在の米ビッグスリーの時価総額の合算値を上回る水準で、モビリティー(移動)市場の主役交代を印象づけることになりそうだ。

ウーバーは10年、リフトは12年にそれぞれ米国でライドシェアのサービスを始めた。「シェアリングエコノミー」の代表銘柄で、中南米や欧州、中東、インドなどで展開するウーバーの18年の売上高は17年比43%増の113億ドルに達する。

後発のリフトはサービス提供地域が米国とカナダに限られるものの、社内セクハラ隠蔽など相次ぐ不祥事で顧客離れが起きたウーバーからシェアを奪うことで18年の売上高を前年比2倍の21億5600万ドルに伸ばした。利用者へのポイント還元などのマーケティング施策でも先行することが多く、直近の成長率はウーバーをしのぐ。

米メディアではウーバーの上場時の時価総額は1200億ドル、リフトは200億~250億ドルになると報じられている。米国の証券市場における上場時の時価総額としては、ウーバーは14年の中国・アリババ集団(1693億ドル)に次ぐ歴代2位となる可能性がある。

ウーバーの時価総額の予想値はトヨタ自動車(約1950億ドル)に次ぐ水準だ。米ライドシェア2強を合わせると、米ゼネラル・モーターズ(GM)と米フォード・モーター、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の先週末時点の時価総額の合計額(約1200億ドル)を上回る可能性が高い。

売上高ではGMやフォードの10分の1にも満たないウーバーやリフトの高い企業価値を支えるのは、潜在的な成長力への期待感だ。車の「所有」から「利用」への動きは世界規模で広がり、米国の調査会社の予測では18年に世界で596億ドルだったライドシェアの市場規模は24年には2.5倍の1487億ドルに拡大する見通しだ。

ウーバーとリフトは資金調達でも競うことになる(ウーバーとリフトのステッカー)=AP

ウーバーとリフトは資金調達でも競うことになる(ウーバーとリフトのステッカー)=AP

米ライドシェア2強の成長戦略は、自家用車やタクシーなど既存の交通手段の代替だけにとどまらない。ウーバーはライドシェアで築いたプラットフォームの上に料理宅配や貨物運送トラックの配車などの新サービスを次々と追加している。米コロラド州デンバーでは地域の公共交通機関と連携し、ウーバーのライドシェアアプリ上で路線バスなどのチケットを購入できるサービスも始めた。

18年にウーバーが買収した自転車シェアを手掛ける米新興企業ジャンプの創業者、ライアン・レゼペッキ氏は「ウーバーのサービス基盤を活用して19年は欧州など米国外に事業を拡大する」と意気込む。米ライドシェア2強は上場によって調達した資金をこうしたM&A(合併・買収)に振り向ける。

高い成長を続け、市場の期待も大きいウーバーテクノロジーズとリフトの米ライドシェア2強。しかし、乗客と運転手の争奪で競争は激しく、本業のもうけを示す修正EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)はともに赤字が続く。ライバルの台頭に加え、将来の成長を見込んだ投資がかさむなか、持続可能な事業モデルをどう構築するかが課題となる。

両社は利用者から受け取る料金の7~8割を運転手などに配分している。マッチングの手数料収入だけではアプリ開発などの費用をまだまかなえない。

米リフトが米証券当局に提出した資料では2018年12月通期決算では21億5600万ドル(約2400億円)の売上高に対し事業運営やマーケティング、研究開発などで31億3400万ドルの総費用を計上したことが判明。黒字化の道筋ははっきりしておらず、米調査会社ピッチブックは上場申請書類を分析したリポートの中で「上場企業としてのリフトの将来は確実ではない」と指摘した。

ライドシェア市場では中国の滴滴出行や東南アジアのグラブなど地域ごとに有力な企業が台頭しており、米ウーバーは中国や東南アジア、ロシアからすでに撤退している。白タク行為を禁止する日本など規制の厳しい地域もあり、米ライドシェア2強はともにグローバル化には苦戦している。

18年12月には米グーグル系のウェイモが米アリゾナ州で自動運転車を使ったライドシェアサービスを商用化した。車メーカーでも米ゼネラル・モーターズ(GM)が19年中に米国内で同様のサービスを始める計画を表明するなど、参入が相次いでいる。

ウーバーもトヨタ自動車と連携し、21年にライドシェア専用車両を導入する計画を打ち出しているが、18年3月にアリゾナ州で起きた死亡事故の影響で今も停滞している。今後も外部とのパートナーシップに活路を求めることになりそうだ。(シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=宮本岳則)

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