和製ヘッジファンドの素顔 驚異の「勝率」の秘密は
駆ける投資家魂(1)

駆ける投資家魂
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2019/3/10 2:00 (2019/3/11 2:00更新)
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ヘッジファンド――。高度な取引手法を駆使し、どんな市場環境でもプラスの収益を目指す投資家だ。機関投資家や富裕層からお金を集めて運用する。堅い守秘義務があるため秘密のベールに包まれているイメージも漂う。どんな戦略で投資リターンを上げているのか。ある和製ヘッジファンドと、その経営者の素顔に迫った。

【次回記事】バフェットを超えたい 凄腕ファンドマネジャーの情熱

■東証の隣にオフィス

ハヤテは東証隣のビル(左)の2階にオフィスを構える

ハヤテは東証隣のビル(左)の2階にオフィスを構える

株の街、東京都中央区の兜町。東京証券取引所のすぐ隣のビルに、日々、市場と対峙するヘッジファンドがいる。ハヤテインベストメントだ。

「では、始めましょう」。2月中旬、朝7時15分。創業者でファンド代表を務める杉原行洋(41)のひと言で、恒例の朝会がはじまった。国内の運用会社や証券大手から引き抜かれてきた3人のアナリストたちの表情が引き締まる。

■有望株を掘り起こせ

毎朝、朝会で議論を交わす杉原(左)と部下たち

毎朝、朝会で議論を交わす杉原(左)と部下たち

中小型株で一体どこが有望なのか。市場がまだ気付いていない価値を掘り起こすための時間だ。「少人数での双方向のやり取りは、これまで経験がないほどに中身が濃い」。国内運用大手からハヤテに転じた高木知哉は話す。

ファンドマネジャー同士が社内で競い合い、負ければクビになるのが常識の業界で、チーム主義を掲げているのもハヤテの特徴だ。情報はすべて共有される。開かれた世界が結果として、投資にもプラスに働くとの思いがある。

この日、取り上げたのはジャスダック市場に上場する作業服チェーンのワークマンだった。作業服の製造で培ったノウハウを生かし、最近はスポーツやアウトドア衣料品に進出した。有名ブランドより格段に安い価格が好業績の原動力だ。

2017年末と比べて株価は2.4倍ほどになった。常識的に考えれば、今から投資するのは得策とはいえない。

■アウトドアの「ユニクロ」に?

ワークマンが展開するスポーツ・アウトドア衣料品

ワークマンが展開するスポーツ・アウトドア衣料品

だが、杉原には仮説がある。ワークマンのプライベートブランド(PB)衣料の専門店「ワークマンプラス」の出店数は3月末時点で10店舗程度にとどまる見通し。これを大量出店したらどうなるか。

あるいはワークマンを傘下に持つベイシアグループが、傘下のショッピングセンターでこのPB衣料を取り扱うようになったとしたら。成長の次元が変わり、「アウトドアの『ユニクロ』になり得る」。

「あすのワークマンの決算発表が終わったら、速やかに会社訪問をしてください」。杉原はアナリストにアポ入れを指示した。

■運用資産は200億円

ハヤテは杉原が05年に立ち上げた。運用資産は200億円弱。日本の個別企業の買いと空売りを組み合わせた投資戦略を採用してきた。空売りは株安にそなえたリスク回避が狙いで、どの企業の株式を買うかの選別が収益の源泉だ。

特筆すべきは年率で平均13%という投資リターンだ。運用を開始した06年3月を基点にすると、実に投資収益率は5倍近くになる。この間、東証株価指数(TOPIX)は16%高というから、その差は歴然としている。

18年には調査会社ユーリカヘッジから「ベスト・ジャパン・ヘッジファンド賞」に選ばれた。杉原の手腕への注目度は国内外で高まっている。

■年間3000社超を訪問

ハヤテの特徴は徹底した企業調査にある。アナリスト1人あたり、1日4~5件の面談をこなす。年間で訪問する企業数は延べ3000社超にも及ぶ。数だけでいえば、日本の上場企業(約3650社)の大半を1年で回ってしまうようなボリュームだ。

「訪問数を少しでも減らせば、長期の投資リターンに響く」。人間のトレーダーでは太刀打ちできない、超高速取引(HFT)が市場を席巻する無機質な時代に、杉原は昔ながらの愚直な手法で挑み続けている。

投資対象とするのは、証券会社のアナリストがカバーしないような中小型株だ。時価総額が1兆円を超える東証上場企業には、平均11人のアナリストがいる。これが100億円未満になると0.19人しかいない。「アナリストのいない企業にこそ、埋もれた宝の原石がある」。杉原の投資哲学だ。

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