東日本大震災8年、復興なお途上 空から見た被災地
ゴルフ場に敷き詰められた太陽光パネル、海岸線に壁のように立つ防潮堤――。1、2の両日、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故の発生から間もなく8年を迎える福島、宮城、岩手の3県を上空から取材した。大きく変貌した被災地の眺めは、震災と原発事故が地域に与えた影響の大きさと、復興が今なお途上にあることを物語っていた。
太陽光パネルで埋まるゴルフコース 福島県富岡町
2017年に帰還困難区域を除き避難指示が解除された富岡町。再開のメドが立たずに閉鎖したゴルフ場「リベラルヒルズゴルフクラブ」のコースは、黒光りする太陽光パネルに覆われていた。18年12月に設置を終えたという。

町内には17年完成の大規模太陽光発電所「富岡復興メガソーラー・SAKURA」もあり、原発事故の影響で増えた遊休農地の利用が進む。
広がる汚染土仮置き場
黒色の土のう袋が並ぶ汚染土の仮置き場はさらに広がり、雑草が茂る周辺の荒れ地とともに重苦しい雰囲気を漂わせる。

埋立処分場に搬入次々と
国の事業で汚染された廃棄物の埋立処分場として17年から稼働する同町の旧フクシマエコテッククリーンセンター。トラックが次々と廃棄物を搬入し、緑色のシートで覆われた袋が段状に積み重なっていた。

立ち並ぶタンク群 福島第1原発
福島第1原発の上空は飛行制限がかけられ、接近できなかったが、処理した汚染水を保管するタンク群が遠望できた。周囲には人影も車も見えない。

東日本随一 気仙沼大島のアーチ橋
気仙沼市では復興道路として国が整備を進める三陸沿岸道路が延伸工事の真っ最中だ。橋脚を増やしたり、橋桁をかけたりする工事が行われている。同市の離島である大島と本土を結ぶ「気仙沼大島大橋」は4月に開通予定。橋脚間は297メートルで、東日本随一の大きさだ。橋の上に架かる真っ白なアーチが印象的で、島民の利便性向上や島内観光の活性化が期待されている。

幅約90メートルの巨大防潮堤
同市の小泉海岸では巨大防潮堤の建設が進む。高さは14.7メートル、幅は約90メートルの威容だ。

閖上地区に新生活圏 宮城県名取市
名取市のかさ上げされた土地には、市内最大規模の災害公営住宅「閖上中央第一団地」などが整備された。4月オープン予定の商店街「かわまちてらす閖上」は黒色の建物がほぼ完成。近くには閖上小中学校もあり、新たな生活圏が形作られていた。

壁のような防潮堤 岩手県陸前高田市
陸前高田市の上空に入ると、そびえ立つ壁のような建設中の防潮堤が目に入った。土地のかさ上げ工事に伴いクレーン車やトラックが激しく行き交い、土ぼこりが舞う。

かさ上げした土地に約2年前にオープンした商業施設「アバッセたかた」の駐車場には多くの車があり、にぎわいを感じさせた。
新設のラグビーW杯会場 岩手県釜石市
今年9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の試合会場で、唯一新設された岩手県釜石市の「釜石鵜住居復興スタジアム」では、手入れの行き届いた黄緑色の芝生が鮮やかに見えた。スタジアム周辺には多くのクレーン車が配置され、周辺の道路整備などを急いでいるようだった。

写真で見る8年目の被災地





(文=大元裕行、写真=小高顕)

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