2019年4月24日(水)

テスラ、オンライン販売に全面移行 EV普及へ大量閉店

自動車・機械
北米
2019/3/1 23:47
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【シリコンバレー=白石武志】米テスラが電気自動車(EV)の本格普及に向け新たな手を繰り出した。2月28日に主力車「モデル3」の廉価版を米国で発売したのに合わせ、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がオンライン販売への全面移行を表明。米国に130ある販売店は一部を除き閉鎖するという。店舗閉鎖でリストラも必要となり課題もありそうだ。

テスラは米国で約130の店舗を展開する(米デンバーの販売店)=AP

テスラは28日午後2時に米国の自社ウェブサイトを更新し、モデル3に3万5000ドル(約390万円)と3万7000ドルの2つの廉価版を追加した。注文画面に進み車両のグレードやインテリアなどのオプションを選びカード決済で頭金を支払えば、購入手続きがオンライン上で完了する機能も整えた。

最低価格で4万ドルを超え日本円で500万~700万円とされる従来の中高級グレードの車両と比べて価格が安いのが特徴だ。

テスラは同日の声明の中で「スマートフォンから1分でテスラを買うことができる」と強調した。購入前に販売店で試乗する必要がないように返品のルールも見直し、購入から7日以内、または走行距離が1600キロメートル以下であれば代金の全額払い戻しを受けられるようにした。

米店舗は一部除き閉鎖

テスラのウェブサイトによると同社は米国だけで約130の店舗を原則直営で運営しており、中国や欧州、日本など約30の国と地域にも販売拠点を構えている。テスラはこれらの全ての地域について段階的に店舗でのセールス活動をやめ、オンラインでの販売に切り替える方針だ。人通りの多い場所に立地する一部の店舗を販売機能を持たないギャラリーとして残すほかは、店舗を閉鎖する見込みだという。

狙いはコストの削減にある。高級車ブランドとしてスタートしたテスラは大衆車を含めて品ぞろえする自動車メーカーへの脱皮を目指して16年3月にモデル3の予約を始めた。当初から最安グレードの価格を普及価格帯の3万5000ドルにする計画を示し予約客を集めていたが、これまでは投資回収を優先し中高級グレードの車両しか納車してこなかった。

マスク氏もモデル3の価格が高止まりしている状況に「我々の製品はまだほとんどの人々にとって高価すぎる」と不満を漏らしていた。テスラではオンライン販売への移行と他のコスト削減策を組み合わせることで、テスラ車の平均価格を約6%下げることができると見込んでいる。

19年1~3月期は厳しく

車の不具合などの修理は基本的に遠隔診断できるサポート体制がある。本格的な故障の際は販売店と別のサービスセンターに運ぶ仕組み。日本のように正規販売店が保守点検しているわけではないため直接的に大きな影響はないとみられる。

テスラはモデル3の量産が軌道に乗ったことで2018年7~9月期以降、2四半期連続で最終黒字を達成したが、収益性の高い中高級グレードの車両引き渡しは終わり、残りの予約は低価格帯が中心となるとみられる。今後も収益性を確保できるかは不透明だ。

130ある直営店を閉めるにあたって従業員も解雇することになる。追加のリストラ費用も発生する見込みで、一時的な収益の悪化は避けられない。マスク氏が28日の発表直後の米メディアとの電話会見で19年1~3月期は利益がでるとはみていないとのべたため、テスラの株価は時間外取引で一時4%安を付けた。

米中、オンラインで先行

一般の消費財に比べてオンライン販売があまり浸透していなかった自動車市場だが、変化は少しずつ出始めている。米国や中国では購入手続きを完結できる販売サイトが増え、徐々に利用者数を伸ばしている。特に中国では電子商取引(EC)サイトでの自動車販売が100万台近くあるとされ、今後も増加が見込まれている。

オンライン販売では一般的な電子商取引(EC)サイトと同じように、予算や車種、塗装色などに応じて車両を絞り込める。360度カメラで撮影した画像で内装も確認できるため、現物を見なくても購入を判断できるという。

独自の与信管理システムで金融機関に行かなくても短時間で自動車ローンの審査を受けられる機能を提供しているサイトもあり、米国では特に中古車販売で普及が広がっている。

中国でも新興メーカーを中心に自動車のオンライン販売が普及し始めた。中国汽車工業協会によると同国での新車販売台数は年間2800万台を超えるが、うち100万台程度がオンラインでの販売といわれる。すでにネット通販大手のアリババ集団なども参入。EC決済の普及の早さもあり、若者を中心にした購入が増えているという。

メーカーにとっては在庫を抱えずにすむため、コストを抑えられる。そのため店頭で販売するより安くできるというのが最大の特徴だ。しかし日本市場ではオンライン販売の普及には懐疑的な見方も根強い。

いったん新車として販売した後に返品された場合は、同じ新車価格で販売することができなくなる可能性があるためだ。「(返品によって生じる)コストを吸収できないのでは」(輸入車メーカーの日本法人幹部)という声もある。

日本人は高額商品をオンラインで即決して購入するようなことはあまりしない。「米国ではいい戦略だと思うが、米国以外の市場でもやるつもりなのか一番気になるところだ」(同)。テスラの新たな戦略が自動車販売の商慣行に風穴を開けられるかどうかはまだ不透明だ。

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