/

米債務問題に再び火種 上限到達、国債増発困難に

【ワシントン=河浪武史】米連邦政府の借入限度額を定めた「債務上限」が3月2日に復活し、米政権は自由に国債発行ができなくなる。特例措置で9月までは資金を確保できそうだが、上限を上げなければ米国債の債務不履行(デフォルト)を引き起こしかねない。債務問題は再び「政争の具」となるものの、政府債務は過去最悪の約22兆ドル(約2450兆円)に膨らんでおり、市場への影響は格段に大きい。

米国は議会が政府の予算執行を監視しており、1917年から法律で政府の借入額に制限をかけている。現在は特例法で上限を凍結しているが、3月1日に期限が切れて、2日からは約22兆ドルある現在の債務総額が新たな上限となる。

2019会計年度(18年10月~19年9月)に見込まれる財政赤字は約9千億ドルと巨額で、税収だけでは資金をすべて賄えない。財務省は2日から特例措置を発動し、政府内で保有する国債を償還して新規国債の発行余地を増やすなどして、資金を確保する方針だ。

米国債は世界で最も流動性の高い安全資産とされ、金融機関だけでなく外国政府も外貨準備として保有する。デフォルトを引き起こせば、世界的な金融危機を引き起こすのは確実だ。そのため、財務省は既に2千億ドルの手元資金を確保。特例措置で3千億ドル分の余地をつくり出す考えで「9月までは政府資金は枯渇しない」(米議会予算局)と、危機回避へ備える。

問題は議会だ。「債務上限は夏までは引き上げない。秋かもしれない」。上院財政委員会のグラスリー委員長(共和)は2月末、早くも審議先送りを宣言した。今夏の20年度予算審議は、野党・民主党との激しい駆け引きが予想される。同氏は「債務上限は予算交渉の一部だ」と主張。議会での交渉材料にする考えを隠さない。市場への影響が甚大な債務上限問題は、与野党協議の「カード」になりやすい。

債務上限は01年以降、16回も引き上げられてきたが、繰り返し「政争の具」として使われてきた。11年には上限引き上げが何度も否決され、米国債の格下げで株価が急落し、世界市場は大混乱に陥った。15年には債務上限を巡る議会の混乱で、ベイナー下院議長が辞任に追い込まれている。

その間、政府債務は膨張が続いた。トランプ政権は10年で1.5兆ドルという大型減税を実現し、特例法で歳出も2年間で3千億ドル積み増した。政権発足から2年で政府債務は2兆ドルも増えており、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「持続不可能だ」と断じる。

にもかかわらず、野党・民主党は財政再建でトランプ政権に攻め込むことをしない。逆に国民皆保険など巨額の財源を必要とする政策を次々に打ち出す。米世論調査によると「米国が直面する最も重要な課題」で財政を挙げた有権者はわずか3%。長期金利はFRBの緩和的な金融政策で低く抑えられ、国民全体の危機感が薄れている。

米連邦政府の利払いは年3千億ドルと既に巨額だが、10年後には9千億ドルと天文学的な数字に膨らむと試算される。債務上限の引き上げは放漫財政に道を開くことにもなりかねず、トランプ政権と議会の判断には、デフォルトという短期リスクと財政悪化という長期リスクの2つがのしかかる。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン