米景気、強まる減速懸念 住宅市場が失速

2019/3/1 0:20
保存
共有
印刷
その他

【ワシントン=河浪武史】好調だった米景気が減速してきた。住宅市場は、これまでの利上げの影響で失速。減税効果が期待された設備投資は米国発の貿易戦争が逆風となる。個人消費は比較的堅調ながら政府閉鎖で一時的に減速した。雇用の拡大と株価の回復で米景気は再び加速する可能性があるが、トランプ政権の場当たり的な政策が重荷になりそうだ。

米南部テキサス州オースティン。「第2のシリコンバレー」と呼ばれ、韓国サムスン電子や米パソコン大手のデルも拠点を構える急成長都市だ。ところが地元業者の集計では、2018年12月の一戸建て住宅の販売件数が前年同月比11%減と急落。1年前の17年12月は同6%増と住宅ブームに沸いていたが、18年後半に急激に失速した。

「堅調だった米景気だが、金利上昇に敏感な分野が弱含んでいる」。テキサス州を所管するダラス連銀のカプラン総裁は警戒を強める。住宅市場は価格指数が12年に「底」をつけると、その後は5割強も上昇。価格高騰に米連邦準備理事会(FRB)の利上げが加わり、同指数は一転して18年9月から下落し始めた。

米景気は09年7月からの拡大局面が10年目に入り、戦後最長の10年間(1991年4月~2001年3月)を更新する勢いだ。米議会は大型減税を成立させ、景気には上振れ観測すらあった。ただ、その財政効果は持続せず、成長率は4~6月期の4.2%をピークに減速へ転じた。

北米5工場の閉鎖を決めたゼネラル・モーターズ(GM)は、19年の設備投資計画を85億ドルとし、前年実績から2億ドル減らす。20年は70億ドルまで減らす予定だ。設備投資の先行指数である資本財受注額(航空機除く非国防)は、18年12月まで2カ月連続のマイナスに転落した。

企業の投資意欲をそぐのは貿易戦争だ。FRBが1月に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、各地区連銀から「貿易政策を懸念して企業が投資を先送りしている」との報告が相次いだ。渦中にある中国経済の減速は原油安も引き起こし、米シェールオイル大手の投資額は19年に1~2割減る見込みだ。

個人消費も右肩上がりの成長が一時ストップした。18年12月の小売売上高は前月比1.2%減と9年ぶりの落ち込みとなった。突然の変化に統計の精度を疑う声すら出たが、トランプ大統領と民主党の対立で連邦政府は一部閉鎖に陥り、消費者心理を強く下押しした。

それでも米ゴールドマン・サックスは「米国は底を脱して成長加速が見込める」と期待をつなぐ。理由の一つは金融市場の持ち直しだ。ダウ工業株30種平均株価は18年秋から年末にかけて5千ドル下落したが、あわてたFRBが19年1月に「利上げを一時停止する」と宣言すると、その後は再び上昇した。

労働市場も力強い。18年12月の求人数(非農業部門)は733万件と過去最高を記録。失業者数(629万人)を大きく上回り、数値上は誰もが仕事を得られる環境だ。賃金上昇率も3%台と、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が腰折れするような要因は見当たらない。

株価の回復は、米中の貿易戦争が打開に向かうとの期待からだ。トランプ大統領は中国製品の関税引き上げを延期すると表明。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談で最終合意にこぎ着けられれば、世界市場の不安は和らぐ。

それで企業投資が再び拡大するわけではない。米政権は日本や欧州連合(EU)とも貿易交渉を始める予定で、トランプ氏は懐に自動車関税の引き上げという強烈なカードを忍ばせる。米経済が長期的に安定するという確信がなければ、企業は投資を増やせず、雇用も先細りが避けられない。

米国は20年に大統領選を控え、早々に「政治の季節」へ向かう。「選挙が近づけばトランプ氏は再び中国を敵視して政策を動かし始める」(米財務省幹部)との見方も色濃い。岐路にある米経済には引き続き「政策リスク」が横たわる。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]