2019年7月19日(金)

バンクシー本物?全国で発見相次ぐ 自治体は困惑も

2019/2/28 11:01
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正体不明の路上芸術家、バンクシーの作品に似た絵が全国で相次いで見つかっている。東京都港区の防潮扉のほか、千葉県印西市や高松市、兵庫県西宮市でも確認された。都は作品を回収し鑑定を進めているが、「落書き」として放置する自治体も多い。真贋(しんがん)論争が熱を帯びる中、騒動はどこへ向かうのか。

最寄り駅から車で10分かかる千葉県印西市の「双子公園」が人気スポットになっている。お目当ては園内にある公衆トイレの壁。直立歩行する猿人が銃のようなものを持った絵が描かれ、バンクシーではとSNS(交流サイト)で話題になり、見物人が集まり出した。

バンクシーと噂される落書きを見ようと、双子公園には連日多くの見物客が訪れる(千葉県印西市)

バンクシーと噂される落書きを見ようと、双子公園には連日多くの見物客が訪れる(千葉県印西市)

2月下旬には平日昼ごろにもかかわらず、公園の駐車場をひっきりなしに車が出入りし、トイレの周辺が地元住民らでにぎわっていた。同県成田市の高校生、馬島勇太さん(17)は約40分かけて自転車で訪れた。写真を撮りながらも「上手だとは思うけど本物かなあ」と首をかしげた。一方で「濃淡の感じがまさにバンクシー」と同市の70代女性。「本物なら名所になる」と興奮気味だ。

バンクシー騒動のきっかけは2018年末に東京都港区の防潮扉で見つかったネズミの絵。その後、千葉県九十九里町の防波護岸でもバンクシーの作品「少女と風船」に似た絵が見つかった。

東京都港区の防潮扉に描かれた、バンクシーの作品に似たネズミの絵(東京都提供)=共同

東京都港区の防潮扉に描かれた、バンクシーの作品に似たネズミの絵(東京都提供)=共同

千葉県九十九里町の漁港の防波護岸に描かれたバンクシーの作品「少女と風船」に似た絵(同町提供)=共同

千葉県九十九里町の漁港の防波護岸に描かれたバンクシーの作品「少女と風船」に似た絵(同町提供)=共同

1月には兵庫県西宮市の阪神西宮駅近くの高架下の縁石にかばんと傘を持つピンク色のネズミのような絵、2月には高松市のスケートボード練習場で傘とかばんを持つネズミの絵が見つかった。

阪神電車の高架下にある縁石で、傘とかばんを持ったネズミのような絵がみつかった(2月下旬、兵庫県西宮市)

阪神電車の高架下にある縁石で、傘とかばんを持ったネズミのような絵がみつかった(2月下旬、兵庫県西宮市)

バンクシーは1990年代に英国で活動を始めたとされる覆面アーティスト。世界各地の街頭の壁などに戦争や難民などをテーマとした風刺画をゲリラ的に描いてきた。昨年10月にはロンドンで絵画作品が高額で落札された直後、額縁に仕掛けられたシュレッダーで裁断され、話題となった。

発見後の対応は割れている。都は混乱を避けるため、絵が描かれていた防潮扉の金属のパネルをはずし倉庫に保管。1月には小池百合子都知事が「東京への贈り物かも?」とツイッターに投稿。専門家の鑑定を進めているという。

高松市もバンクシー公認の認証団体に鑑定を依頼することを検討中。一方で千葉県銚子漁港事務所は「落書きが漁港の機能に支障をきたすこともないので当面はそのまま」。西宮市も態度を決めかねているのが現状だ。

印西市の公園を管轄する千葉県印旛土木事務所の担当者は「落書き以上のものではないと認識している」と説明。「時期を見て消すことも検討する」と話す。

絵は本物なのか。バンクシー作品に詳しい東京芸術大の毛利嘉孝教授(社会学)は、都の防潮扉で見つかった作品は本物とみる。作品集にこの絵を反転させた作品が紹介されており、欄外に「Tokyo 2003」の記載があるためだ。写ったボルトの位置やシミも一致しているという。

他の作品については「バンクシーは絵を描く際、逮捕リスクの調査など周到に準備する。ふらっと来て描けるものではない」とし本物の可能性は低いとみている。

■器物損壊罪に問われるの可能性も
 バンクシーの評価は高まっており、海外で作品を保護する動きも広がっている。ただ落書きは犯罪行為でもあるため、行政の対応には慎重さが求められそうだ。
 バンクシーは自らの作品を写真共有アプリ「インスタグラム」やホームページで発信する。本物と確認された場合、海外では作品の上からアクリル板を張ったり、建物を柵で囲んだりして保護するケースが目立つ。
 ただ、落書きは刑法の器物損壊罪(3年以下の懲役か30万円以下の罰金・科料)や建造物等損壊罪(5年以下の懲役)などに問われる可能性がある。近年は観光名所や文化財に落書きした外国人観光客の摘発も相次ぐ。
 近畿大の辻本典央教授(刑事法)は「行政がバンクシー作品を保護すると『誰の絵なら許されるのか』という線引きが問題になる。作品の価値や公益性などについて慎重に検討する必要がある」と指摘する。
 一方、バンクシーに関する訳本があるライターの鈴木沓子さんは「英国では保存を望む住民が多く、自治体も黙認している。都庁などはパブリックコメント(意見公募)を取ってみては」と提案する。

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