AIは人類の敵か味方か 各界リーダーの提言

テクノロジー
(1/2ページ)
2019/3/4 6:30
保存
共有
印刷
その他
CBINSIGHTS
 我々は好むと好まざるとにかかわらず人工知能(AI)との共存を迫られている。人類の知能をはるかに超えるAIが我々の生活を脅かす存在となる日がやって来るとして脅威論を唱える識者も多い。一方で、AIが我々の生活をより豊かで便利なものにするという楽観論もある。現代の新興テクノロジー企業にとって欠かせないピースであるAIは敵か味方か――。答えはまだ出ない。著名起業家から政治家、文筆家など各界のリーダーからの、誰もが向き合うべき命題への提言を紹介する。

AIは働き方から旅行のスタイル、法の執行に至るまで人類の文明を変えつつある。これはもはや避けて通ることはできない。AIが進化し、日常生活に浸透するにつれ、危険な状況をもたらす可能性も鮮明になりつつある。米カリフォルニア州では、米テスラの電気自動車(EV)「モデル3」の運転手が自動運転機能「オートパイロット」を利用中に死亡。アリゾナ州では、(運転手がハンドルを握っていたものの)米ウーバーテクノロジーズの自動運転車が歩行者をはねて死亡させた。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

これに比べれば目立ちにくい例もある。例えば、米IBMのAI「ワトソン」をがん患者の診断に使ったところ、「危険で不正確な治療を推奨」するケースが続出した。

世界のトップ研究者や産業界のリーダーの一部には、こうした問題は氷山の一角にすぎないとの見方がある。開発者がもはや制御できないほどAIが進化すればどんな状況になるのか。人間の立場はどうなるのだろうか。

本稿では、AIが人類の未来にもたらす脅威や、どうすれば、人間を滅ぼすのではなく支える存在にできるのかについて、様々な分野の専門家の意見を紹介する。

1 スティーブン・ホーキング博士(英物理学者)

「AIは制御不能になりかねない」

「車いすの天才科学者」として知られた英物理学者で、「ホーキング、宇宙を語る」などの著作もある故スティーブン・ホーキング博士は、AIはいずれ制御不能になり、機会を与えられればすぐに人間を超えると信じていた。

「こうしたテクノロジーが金融市場の裏をかき、人間の研究者よりも優れた発明をし、人間のリーダーを操作し、我々には理解さえできない武器を開発することは想像に難くない。AIの短期的な影響はだれが支配するかに左右されるが、長期的な影響はそもそも支配できるのかによって決まる」

2 イーロン・マスク氏(米テスラの創業者兼最高経営責任者=CEO)

「規制は不可欠だ」

ツイッターで意見を盛んに発信している米テスラのイーロン・マスクCEOほど、AIの危険について率直に語るテクノロジストはいない。マスク氏のAIに関するツイートは物議を醸す論調のものが多いが、マスク氏の警告は衝撃的であると同時に説得力がある。

「AIについては非常に慎重になるべきだと思う。我々の存続に関わる最大の脅威は何かと考えれば、おそらくAIだろう。これがAIに対して慎重になるべき理由だ。人間が愚かな行為をしでかさないよう、国や国際社会のレベルで何らかの規制を設けて監視すべきだと考える科学者は増えている」

「我々はAIにより、悪魔を呼び出そうとしている。五芒星(ごぼうせい)と聖水を持つ男が登場する物語では、男は悪魔を制御できると踏んでいるが、うまくいかないようなものだ」

AIは高度化し、重要な責務を任されるようになるため、人類の未来を守るには適切な規制に基づいた監視が必要になるとマスク氏は確信している。

「食品や医薬品、航空機や自動車と同様にAIとロボットにも規制が必要だ。公共のリスクは公的機関が監視しなくてはならない。米連邦航空局(FAA)を厄介払いしても、飛行の安全性は高まらない。規制には正当な理由があるのだ」

マスク氏はAIの破壊力を北朝鮮がもたらす世界核戦争のリスクと比較している。

「AIの安全性について心配していないなら、心配すべきだ。北朝鮮よりもはるかに大きなリスクがある」

一方、AIは人類の未来を脅かす邪悪な存在とは限らないとも指摘している。マスク氏にとっては、冷たく不変な機械の論理はSFに登場する悪役と同じように危険なのだ。

「AIは人類を滅ぼす悪とは限らない。AIが目的を抱き人類が邪魔になれば、つらい感情どころか、考えることさえせずに人類を滅ぼすだろう」

3 ウラジミール・プーチン氏(ロシア大統領)

プーチン大統領(タス=共同)

プーチン大統領(タス=共同)

「AIは国際政治に重大な影響をもたらす」

世界の首脳はAIの比類なき力が地政学的状況を変えてしまうことを本能的に理解している。例えば、ロシアのプーチン大統領はAIを支配すれば世界の政治権力に大きな影響を及ぼすと固く信じているようだ。

「AIはロシアだけでなく、全ての人類にとっての未来だ。大きなチャンスをもたらすが、予想もつかない脅威も伴う。この分野でリーダーになる者が、世界を支配するだろう」

4 ティム・クック氏(米アップルCEO)

「AIは人間の価値を尊重しなくてはならない」

クックCEO=共同

クックCEO=共同

人類を滅ぼす可能性に比べると論じられる機会がはるかに少ないAIのもう一つの側面は、AIに人間の倫理を尊重することを教えられるかどうかだ。

米アップルのティム・クックCEOは利用者のプライバシーを積極的に擁護してきた。社会の問題を倫理的なアプローチで解釈し、評価するAIを開発することは、アップルのような企業が考えなくてはならない未来の世代に対する重大な責任だと主張する。

「人間の属性を大量に収集することでAIを進化させるのは、効率的ではなく怠慢だ。AIを真にスマートにするには、プライバシーを含む人間の価値を尊重するようにしなくてはならない。この点を見誤れば、危険は大きい。素晴らしいAIと素晴らしいプライバシーの基準は両立可能だ。これは単なる可能性ではなく、責任なのだ。AIの開発にあたっては、人間の知性の特徴である思いやりや独創性、創意工夫を犠牲にすべきではない」

  • 1
  • 2
  • 次へ

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]