政府、ロ高官の色丹訪問に抗議 抑制的対応も
菅義偉官房長官は27日の記者会見で、ロシアのセルゲイ・イワノフ大統領特別代表が北方領土の色丹島を訪問したのを受け「日本の法的立場と相いれず受け入れられないとの旨の抗議をした」と述べた。同時に「こうした問題には北方領土問題それ自体の解決が重要だ」などと平和条約締結交渉を進める方針に触れ、抑制的な対応もみせた。
イワノフ氏の色丹島訪問はサハリンと択捉、国後、色丹各島を結ぶ光ファイバー回線の開通式典に出席するため。ロシア政府高官の色丹島訪問は異例だ。日本側はこの回線工事を巡り、2018年6月にも抗議した。
日ロ両政府は平和条約交渉の実務を担う森健良外務審議官とモルグロフ外務次官の協議を近く開く方針でラブロフ外相の来日も調整中。ロシア側にはこのタイミングで色丹島に政府高官を派遣し、領土交渉を有利に進めようとの狙いがありそうだ。
日本側は抗議しつつも交渉には影響を与えないよう配慮する。菅氏は18年の回線工事に抗議した際には「ロシアによる法的根拠のない占領の下、事業が進むことは北方領土に関する我々の立場と相いれず極めて遺憾だ」と述べていた。今回は「法的根拠のない占拠」などの文言は控えた。
日ロ両首脳が交渉の基礎と位置付ける1956年の日ソ共同宣言は色丹島と歯舞群島の引き渡しを定めた。色丹島ではロシア企業による水産加工の工場建設が進むなどロシアの実効支配が強まっている。