入社1~3年目、半分が転職予備軍 目立つ金融・IT
入社1~3年目のキャリア意識調査(中)

厳しい就職活動を乗り越え社会人になったものの、入社1~3年目の社員の半数が転職を検討している。日本経済新聞社が学生サイトU22開設に際し、就職情報大手ディスコ(東京・文京)と実施した共同調査でわかった。特に金融やIT(情報技術)業界で転職予備軍が目立つ。就活生はこうしたミスマッチを避けるために、売り手市場でもしっかりと企業研究をすることが必要なようだ。
ディスコが運営する就活情報サイト「キャリタス就活」に登録し、就職活動モニターをしていた入社1~3年目(2016~18年卒)の若手社員を対象に、キャリア形成への意識を調査した。1148人から回答を得た。
「現在転職活動中」と「転職活動はしていないが検討中」と答えた人は合わせて50.3%を占めた。内訳をみると、実際に転職活動をしている人は4.3%にとどまるが、検討中の「転職予備軍」は46.0%にのぼった。転職を検討する理由(複数回答)として、多かったのは「会社や業界の将来に不安を感じた」(39.4%)、「収入を上げるため」(38.4%)だった。

金融は将来性への不安、ITは収入アップが理由
業種別で転職予備軍が最も多かったのは金融で57.6%。ITが55.0%でつづいた。転職を検討する理由は、金融では「会社や業界の将来に不安を感じた」(45.9%)が最も多かった。ITでは「収入を上げるため」(50.0%)だった。
金融業界では「斜陽産業だから」「業務内容に文句はないが将来的には縮小傾向にある業種だと思う」「金融業界で明るい話題がない。転職するなら早いうちにしたい」などと、業界の将来性を不安視する声があがった。
IT業界ではエンジニア不足によって一部企業で給与水準が高騰している。そのため回答者からは「自分の市場価値を確認するため、求人サイトを見ている」といった、給与や待遇のために転職を検討する声が目立った。
製造業の転職検討理由は将来性(43.8%)が最多だった。「業界はこのままでは有望な人材が集まらず、自分が管理職になったときに苦労する」などの意見があった。
1割が入社前から転職検討 「合わなければすぐ辞める」が半数
転職を検討し始めた時期について聞いたところ、「入社前から」(13.4%)という回答が一定数あり、学生時代から柔軟にキャリアを設計しようとする傾向がうかがえる。
「今の会社がなくなっても食っていけるようにしようと日々考えている」(18年卒、男性・メーカー)、「ある程度社会人としての能力が身についたら、個人の裁量が大きい会社へ行きたい」(17年卒、女性・メーカー)といった声も目立つ。職場に不満があるというよりは、そもそも終身雇用を前提として考えていない若手が少なくない。
「合わない会社・仕事でも3年は続けるべきだ」か、「合わないと思ったらすぐ辞めるべきだ」のどちらかを選ぶ質問では、後者が54.8%とやや多かった。IT大手の人事部長は「面談で、『御社を辞めた人はどこに行くのか』と聞かれたことがある」と明かす。
「石の上にも三年という概念はない。転職市場も盛り上がっているから、実際どこでもいけてしまう」(百貨店の採用担当者)と企業側は嘆く。
早稲田大学ビジネススクール准教授で経営学者の入山章栄氏は「最近の経済学研究では、会社がつぶれるリスクは高まっていると言われており、優秀な学生ほど1社にしがみつく発想ではなく、ステップアップを前提にキャリアを考える傾向がある」と分析する。「やりたいことが見つからないと悩む若い人も多いが、人生100年時代においては、『30歳で成人』ぐらいに考えて、20代のうちは様々な経験を積みながら、自分探しをする助走期間だと捉えた方がよい」とも指摘する。
6割が「社会人になってよかった」
「社会人になってよかった」か、「学生のままでいたかった」を選ぶ質問では、前者が63.2%と優勢だった。また、「与えられた以上の仕事をしていきたい」と「自分の仕事はできるだけ少ない方がよい」の2者択一では、前者が多く65.3%だった。総じて、仕事や働くことに対しては前向きに捉えているようだ。
「業務上学んだ知識をもとに社会を見てみると、なるほどこうなっていたんだと再発見して楽しい」(18年卒、女性・メーカー)、「時々、他の部署に行ってできることを探す。中には自分を必要としてくれる人がいて、それが励みになる」(16年卒、男性、官公庁・団体)、「エクセルなら資料を完成させていくゲームだという風に、自分が好きなものに近づけて考えるようにしている」(17年卒、男性・メーカー)など、自分なりに仕事を楽しむ工夫を見いだしている人が多い。
日本経済新聞社とディスコが1月16~27日にインターネットで実施した。大学生時代にディスコが運営する就活情報サイト「キャリタス就活」に登録し、就職活動モニターをしていた入社1~3年目が対象で1148人から回答を得た。内訳は男性629人、女性519人、文系出身714人、理系434人。新卒で入社した企業の規模を従業員数でみると、299人以下が13.9%、300~999人が19.2%、1000~4999人が26.4%、5000人以上が40.5%だった。
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