2019年6月20日(木)

近現代史映す赤レンガ 姫路市立美術館(もっと関西)
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コラム(地域)
2019/2/27 11:30
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国内外からの観光客でごった返す姫路城大天守を横目に、東へと歩いて3分ほど。堀を1つ渡ると、L字形に2方向へ伸びる赤レンガの建物が見えてくる。姫路市立美術館だ。

旧陸軍の倉庫を活用した姫路市立美術館(兵庫県姫路市)

旧陸軍の倉庫を活用した姫路市立美術館(兵庫県姫路市)

建物の前に立つ。南北に伸びる細長い西館の北端に、東西に伸びる北館が連結し、L字を形作る。芝生の緑色に、レンガのくすんだ赤茶色がよく映える。建物を囲む庭園にはロダンやブールデルなどの現代彫刻が点在する。

■色と時代の対比

見上げると青い空。赤レンガの向こうに、先ほどの大天守が望める。南からの重厚感ある外観が広く知られる大天守だが、こうして東から見ると意外とスリムな姿に驚く。この場所では中世と近現代、和と洋、赤色と緑色と、いろんな対比が美しい。

美術館の建物は1905年、旧陸軍がまず西館を倉庫として建造した。13年に北館が増築され、現在のL字形になった。明治から戦前まで、大坂城など大規模な城跡には軍関連の施設が置かれることが多かった。「姫路城も陸軍の一大拠点で、城内だけでなく城外にも赤レンガの軍施設がいくつも軒を連ねていました」。姫路市文化財課の大谷輝彦氏は言う。

45年、姫路は米軍から空襲を受ける。被害は甚大だった。だが姫路城大天守とともに、L字型の建物も残った。終戦後、姫路城の内外の軍施設の大半は廃棄され、または民間に払い下げられ、ほぼすべての建物は取り壊された。跡地は現在、学校や病院、動物園などになっている。

唯一現存する当時の建物がこの姫路市立美術館だ。「終戦後、姫路市役所として再利用されたことで、取り壊しを免れました」と大谷氏が言う。近年の調査で、レンガのほとんどは大阪で製造されたことが分かっている。

その後、83年に美術館として再生され、2003年に国の登録有形文化財に登録された。この建物は姫路城の近現代史を物語る数少ない遺産でもある。

美術館前の庭に展示されている彫刻作品(兵庫県姫路市)

美術館前の庭に展示されている彫刻作品(兵庫県姫路市)

■屋内に軍の名残

軍施設としての名残は屋内にも見られる。例えば、2階建ての屋根裏部屋。長い横木に、長さ13センチほどのカギ形の鉄棒がびっしり等間隔で並んでいる。馬具などをつるしたと考えられるが、確かなことは分からない。こうした細部からも歴史の重みが伝わる(屋根裏は非公開)。

同館の収蔵品は兵庫県や姫路市など地元ゆかりの作家の作品や資料、日本の近現代美術、ベルギーを中心とする海外の近現代美術を3本柱とする。ベルギーに焦点を当てるのは、姫路市がベルギーのシャルルロワ市と姉妹提携を結んでいるため。フェルナン・クノップフからルネ・マグリット、ポール・デルボーまで、ベルギー美術は国内有数の充実ぶりだ。

注目される企画展も多く開く同館だが、建物は築100年を超える。近代の建築らしく、内部は柱が多く並び、ウナギの寝床のような異様に細長い展示室などもある。メンテナンスに手間がかかることもあり、展示施設として必ずしも使い勝手がよいとは言えない。

これについて、同館の本丸生野学芸員は言う。「確かに展示しにくい場合もあります。しかし、歴史ある建物で美術品を鑑賞するのは、やはり独特の趣がありますし、来館者からも好評です。何と言っても、建物自体が貴重な文化遺産ですから」

大阪・文化担当 田村広済

写真 大岡敦

交通・ガイド》姫路市立美術館は姫路駅から徒歩約20分。バス停、姫山公園南・医療センター・美術館前すぐ。開館は午前10時から午後5時まで。入館料は大人200円、大高生150円、中小生100円。企画展は別途観覧料が必要。庭園や外観見学は無料。周辺は姫路城や兵庫県立歴史博物館、姫路市立動物園など見どころが多い。

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