非核化「検証」が焦点 米朝再会談3つのシナリオ

2019/2/24 19:13
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【ソウル=鈴木壮太郎】2月27、28日の米朝首脳再会談を目前に控え、日本や韓国では交渉術の名人を自称するトランプ大統領の「ディール」(取引)で膠着してきた北朝鮮の非核化がどこまで進むかに関心が集まる。懸念されているのは、トランプ氏が短期的な外交成果を演出できるだけで実質的な非核化が進まない「バッドディール」(悪い取引)を受け入れることだ。3つのシナリオで首脳会談の行方を占った。

シナリオ(1)ビッグディール

「制裁緩和と引き換えに、良い結果が得られることを期待している」(14日、ポンペオ米国務長官が米CBSテレビとのインタビューで)

「北朝鮮が果敢な非核化措置をとるのなら、国連安保理の制裁も緩和すべきではないかという議論も可能だ」(16日、康京和=カン・ギョンファ韓国外相が中央日報とのインタビューで)

米国と北朝鮮は昨年6月の首脳会談で、北朝鮮が非核化する見返りに、米国は「相応の措置」をとることで合意した。制裁に苦しむ北朝鮮が強く望んでいるのが経済制裁の緩和だ。米国にとっては北朝鮮に非核化を促す切り札。これまで「制裁緩和」という表現を慎重に避けてきた米国が言及したことで「ビッグディール」があり得るとの観測が浮上する。

制裁緩和による経済協力の進展という大きな果実を得るには、北朝鮮もそれに見合う非核化措置が必要だ。核施設の5割が集中する寧辺(ニョンビョン)の核施設の廃棄と、廃棄が履行されたかを検証する国際原子力機関(IAEA)や米国による完全な査察を受け入れれば、非核化は一定の進展といえる。

寧辺以外の未公開施設の公開・廃棄やすべての核リストの提示、核廃棄計画の策定まで盛りこまれれば、相当な進展と評価できる。

シナリオ(2)スモールディール

ただ、スウェーデンのストックホルム郊外、平壌と2度にわたり開催された米朝の実務者協議では、双方の意見の隔たりは埋まらなかったようだ。

米国のビーガン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮国務委員会の金革哲(キム・ヒョクチョル)米国担当特別代表は近く、ハノイで実務会談を開く。ただ、首脳再会談まで1週間あまりとなっても着地が見えないことから、「スモールディール」にとどまるとの見方も根強い。

核を温存したい北朝鮮が寧辺の核施設の廃棄を約束したとしても、査察の受け入れを拒むのなら米国も大きな見返りは与えられない。すでに爆破した北東部豊渓里(プンゲリ)の核実験場や、東倉里(トンチャンリ)のミサイル実験場の査察受け入れにとどまるのなら、米国が与える見返りは朝鮮戦争の終戦宣言や連絡事務所の設置、人道支援の再開くらいだろう。

シナリオ(3)バッドディール

「急がない。我々はただ(核実験やミサイル発射など)テストを望まないだけだ」(15日、トランプ米大統領が記者会見で)

大きな進展がみられないという点で、スモールディールでは米朝双方に不満は残る。ただ、それよりも怖いのは、米国が非核化のハードルを下げてしまうことだ。15日のトランプ氏の発言はそれを連想させ、韓国で不安が広がっている。

最悪なのは米国が米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の一部廃棄や、査察の裏付けのない核施設廃棄の約束と引き換えに、北朝鮮が求める制裁緩和など過大な見返りを与えてしまうことだ。

米国は核の脅威が軽減されるが、中・短距離弾道ミサイルが温存されれば、射程内の日本や韓国がリスクにさらされる状況は変わらない。北朝鮮も非核化に取り組む動機がなくなる。日本や韓国が最も警戒するシナリオだ。

事実上、終身の独裁体制をしく金正恩氏はクーデターなどで政体が崩壊しない限り十年単位の長期を見据えた外交を展開できる強みがある。一方、トランプ氏は上下院で多数派が異なる「ねじれ議会」に直面し、ロシア疑惑でも苦しい立場に立つ。トランプ氏が外交で成果をあげようと焦れば、トップ会談に照準をあわせる金正恩氏がそれを見過ごすとは考えにくい。

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