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トランプ氏、与党説得できず シリア撤収方針を撤回

【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領が22日、米軍をシリアから全面撤収させる方針を撤回した。過激派組織の完全壊滅を優先すべきだと訴える与党・共和党を説得できず、撤収後の治安維持を期待した欧州諸国との調整も難航した。2カ月間に及んだシリア撤収をめぐる混乱は欧州やクルド人勢力との同盟関係を傷つけるなど大きな代償を払った。

「駐留を続ける米兵はほんのわずかだ」。トランプ氏は22日、シリア駐留継続を渋々認めた。2015年に派遣した米軍の地上特殊部隊は2000人規模。米メディアによるとこのうち400人がシリア北東部と南部に分かれて残る見通しだ。

トランプ氏に翻意を促したのは身内の共和党だ。米メディアによると、トランプ氏に近いリンゼー・グラム上院議員は2月中旬、シャナハン国防長官代行と面会。シャナハン氏が4月末までに全面撤収すると伝えるとグラム氏は「私はあなたの友人ではなく敵対者となった」と断じて、全面撤収に猛反発した。議会上院も撤収に反対する法案を共和党主導で可決していた。

共和党は早計な撤収がシリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)の復活を招くとの危機感を強めていた。IS支配地は激減したが、数万人規模のIS戦闘員が潜伏しているとされ、散発的なテロや過激思想の普及のリスクは残る。コーツ国家情報長官は1月末に「ISは長期的にイラクやシリアでの領地の再奪還を企てるだろう」と警告していた。

米政権はシリアのクルド人勢力とトルコの衝突リスクに頭を悩ませた。米軍とIS掃討で協力してきたクルド人勢力をトルコはテロ組織とみなし、米軍撤収後に攻撃する方針を公言していたからだ。衝突が起きればクルド人勢力がIS掃討に割く余裕はなくなる公算が大きい。

米国は衝突回避のためにシリア北部に安全地帯を設けて、欧州諸国の軍に治安維持を委ねる案を模索した。だが欧州は米軍の関与を条件にあげて駐留継続を迫った。米メディアによると、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が21日、欧州の協力を取り付けるためにも米軍の一部部隊の駐留継続が必要だとトランプ氏を説得した。

駐留継続は敵対視するイラン対策の面もある。部隊を残すシリア南部アルタンフはイラクとヨルダンの国境沿いに位置する。イランの中東での動向を監視し、勢力拡大をけん制する役割があるとして、対イラン強硬派のボルトン氏が駐留継続を訴えてきた。南部に部隊を残せば同盟関係にあるイスラエルへの配慮をアピールすることもできる。

18年12月に始まったシリア撤収をめぐる混乱はひとまず収束に向かうとみられる。ただ事前調整をせずに唐突な撤収を表明したトランプ氏に対して欧州諸国やクルド人勢力の不信感が強まったのは確実だ。現実派のマティス前国防長官の辞任を招くなど安全保障政策の立案にも悪影響を及ぼしかねない結果となった。

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