虐待根絶 まず体罰禁止の法制化、政府・与党が調整

2019/2/22 22:50
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政府・与党は相次ぐ児童虐待問題を受け、虐待の根絶に向けた対策を急ぐ。今国会に児童福祉法と児童虐待防止法の改正案を提出する予定。児童福祉司の国家資格化や体罰禁止などの案を調整する。与党内には親が子を戒めることを認める民法上の「懲戒権」を見直す動きもあるが、しつけの必要性の観点から慎重論もあり、国会での議論の行方が注目される。

 塩崎元厚労相(左から3人目)から、懲戒権の在り方の検討を求める決議を受け取る山下法相(同4人目)=19日午後、法務省

自民党「虐待等に関する特命委員会」の馳浩委員長は22日のBSフジ番組で、27日に厚生労働部会と合同会議を開き、児童虐待防止法などに体罰禁止を明記する改正を求める提言をまとめる意向を明らかにした。22日の特命委でこの方針を確認した。

馳氏は児童相談所を巡り「医師、弁護士の常勤化は進めたい」とも語った。自民党の議員連盟や超党派有志の勉強会も同様の提言をしている。

政府・与党の危機感は強い。安倍晋三首相は19日の政府・与党連絡会議で「あらゆる手段を尽くし、虐待の根絶に向けてスピード感をもって対策を講じる」と述べた。政府は児童福祉司約1000人の増員を2019年度中に前倒しする目標を掲げ、経験者確保を急ぐ。

当面の焦点は政府が今国会に提出予定の改正案の内容だ。公明党も19日に出した提言で体罰禁止規定の新設を訴えた。

政府は18年に東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5)が死亡した事件を受けて法改正を検討。子どもの保護と支援を担う部署を分けて「介入」機能を強化する児童福祉法の改正などの準備を進めていた。19年1月に千葉県野田市でも栗原心愛さん(10)が死亡した事件が起き、与党は抜本的な法改正を求めた。

体罰の禁止を巡っては、東京都が20日開会の都議会定例会に保護者による体罰と暴言の禁止を盛った条例案を提出した。体罰禁止の明記は都道府県で初めて。こうした流れも国政での法改正の動きを後押ししそうだ。

児童福祉法の改正では、自民党議連などは児童福祉司の国家資格化も打ち出す。公明党はすべての児童相談所への警察職員や警察OBの配置を提案している。今後は児童虐待の防止策の実効性が国会の焦点になる。

与野党内には児童福祉法と児童虐待防止法の改正案に関し、首相の答弁を求める「重要広範議案」に指定する案も出ている。夏の参院選に向けて、国民の関心が高い虐待根絶への取り組みを強調する狙いもある。

民法の懲戒権の削除を訴える声もある。自民党議連などが19日に山下貴司法相に削除を求めた。しつけと称した体罰を容認する根拠になるとみるためだ。公明党も規定の見直しに言及している。

首相は衆院予算委員会で「規定のあり方は法務省に検討させる」と表明した。民法など基本法の改正は通常、法制審議会(法相の諮問機関)で有識者による専門的な議論が必要となる。法制審での議論は数年単位かかることが多い。

懲戒権の削除には伝統的な家族観を重視する自民党内に慎重論が強そうだ。非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の17年の調査ではしつけのための子への体罰について「他に手段がないとき」を含めて約6割が容認している。

このほか、自民党内には児童虐待の厳罰化に向けた「児童虐待罪」の創設を求める主張もある。

ただ、児童虐待の根絶に向けては、体罰禁止の法制化や懲戒権の見直し、児相の体制強化といった対策だけでは不十分との見方が多い。家族や社会のあり方が密接に関わるテーマだけに、今後は加害者側の背景などを検証する作業も必要になってくる。

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