2019年5月22日(水)

高齢ペット、手厚くケア 健康診断や介護…人間並みに

コラム(ビジネス)
2019/2/23 12:22
保存
共有
印刷
その他

ペットの平均寿命が延び、高齢犬猫向けビジネスが広がってきた。専用設備を備えたフィットネスや最新型コンピューター断層撮影装置(CT)を使った健康診断、スタッフが24時間常駐する介護施設など、人間並みのサービスが愛犬家や愛猫家の心をつかむ。

ともに過ごす時間が増えて愛情が生まれ、家族の一員になっていくペット。より長く、一緒に暮らしたい――。飼い主の思いが旺盛な消費を生み出している。

「一歩一歩、ゆっくり歩こう」。トレーナーの指示に合わせ、12歳のコーギー犬がフィットネス用温水プールを進む。17年に開業した犬向け会員制施設「ワンコット」(横浜市)でのレッスンの一こまだ。

この日は5分歩き、数分休むメニューを6セットこなした。体重約19キログラムと太り気味にもかかわらず、足腰が弱り十分な運動ができずにいた高齢犬。浮力で関節に負担を掛けないトレーニングを続け、入会後9カ月で約3.2キログラムの減量に成功した。

飼い主の女性は「以前より身軽に歩くようになった。一日でも長生きしてほしい」と満足げだ。同施設はほかにもウオーキングマシンやバランスボールなどを使い、動物病院に勤務経験のあるスタッフがそれぞれの犬の状態に合わせたプログラムを組む。月間およそ200匹の「利用客」のうち4割が高齢犬だ。

スポーツクラブNAS(東京・江東)が東京都稲城市で運営する「わんわんフィットネス」も盛況だ。評判は口コミで広がり、15年のオープン時と比べ8倍の月間150人の愛犬家が詰めかける。

■情移り「家族」に

東京農工大学と日本小動物獣医師会の共同調査によると、犬の平均寿命は1990年の8.6歳から2014年には13.2歳に延びた。高齢期とされる7歳以上は半数を超える(ぺットフード協会の18年の全国犬猫飼育実態調査)。

ヤマザキ動物看護大学の新島典子准教授は「一緒に過ごす時間が長くなるにつれ情が移り、よりお金をかけるようになった」と分析する。ペットの家族化が市場を広げる。

愛犬や愛猫の健康を願う思いは切実だ。京都市の右京動物病院ヘルスケアセンターは健康診断の新メニュー「プレミアムスケーリングコース」を1月から始めた。料金は9万5千円と高額だが、人間用と同じ装置を使ったCTや内視鏡、腹部エコーなど10種類の検査をセット。14歳の愛犬に同コースを受診させた木村好江さん(53)は「家族が人間ドックを受ける感覚。これだけの検査をしてくれるなら安い」と話す。

人間用と同じCTで精密な検査が受けられる(京都市)

人間用と同じCTで精密な検査が受けられる(京都市)

モニターに体の断面が映し出される。検査の結果、14歳のミニチュアピンシャーに膵臓(すいぞう)がんの疑いが見つかった。飼い主の女性は「心構えをする良い機会になった」と話す

モニターに体の断面が映し出される。検査の結果、14歳のミニチュアピンシャーに膵臓(すいぞう)がんの疑いが見つかった。飼い主の女性は「心構えをする良い機会になった」と話す

ドライアイ検査で涙の量を調べる。平野隆爾院長によると、健康診断を受けるペットは3年で3倍以上に増えているという

ドライアイ検査で涙の量を調べる。平野隆爾院長によると、健康診断を受けるペットは3年で3倍以上に増えているという

■「老々介護」難しく

どれだけ健康に配慮しても、介護の必要性に直面することも。飼い主から預かり、重労働となる世話を請け負う施設も増えてきた。飼い主自身の入院や介護施設への入所による利用が多く、人間の高齢化も需要を後押しする。

熊本県菊池市の「老犬ホームトップ」には42匹の犬と8匹の猫が入居する。天気の良い日は広々とした運動場で遊ばせ、寝たきりの場合は床ずれ防止のため定期的に姿勢を変える。部屋には監視カメラを設置し24時間態勢で様子を見守る。利用料は年間34万円からだ。

各部屋に監視カメラが設置され、異変があればスタッフがすぐに駆けつける(熊本県菊池市)

各部屋に監視カメラが設置され、異変があればスタッフがすぐに駆けつける(熊本県菊池市)

専用の椅子で気分転換する寝たきりの犬。大型犬の体重は25キログラムを超え、体を起こし座らせるのは2人がかりになることも

専用の椅子で気分転換する寝たきりの犬。大型犬の体重は25キログラムを超え、体を起こし座らせるのは2人がかりになることも

施設を利用する理由の7割が飼い主自身の入院や介護施設などへの入所だ。飼い主が死亡し、引き取り手の見つからない老猫を遺族が預けるケースもあるという

施設を利用する理由の7割が飼い主自身の入院や介護施設などへの入所だ。飼い主が死亡し、引き取り手の見つからない老猫を遺族が預けるケースもあるという

環境省によると同様の施設は5年前に比べ約7倍の138事業所に増えたが、飼育方法をめぐり飼い主との間にトラブルが発生するケースも。

老犬ホーム協会(熊本県菊池市)の緒方心代表理事は「1頭あたりの面積など、きちんとしたルール作りが必要」と指摘する。そのうえで「やむを得ず飼えなくなった時の新たな選択肢になれれば」と期待している。

(写真部 石井理恵)

■飼い主、財布のひも緩く
 ペットの長寿化に伴い、関連支出額も増えている。1990年は年間8千円弱だったのが、2017年には2万1千円を超えた(総務省家計調査より)。家族の一員としてペットを大切に思う飼い主の意識が消費拡大を支えている。

保存
共有
印刷
その他

ペットに再生医療 広がる[有料会員限定]

2018/12/28付

愛犬の老後 備えは万全 筋トレ・介護・リゾート施設…[有料会員限定]

2018/11/19付

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報