楽天携帯網 新技術大手で初の導入 可能性とリスクと
設備投資5分の1に 通信品質確保が課題

2019/2/20 23:03
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楽天は20日、10月に始める携帯通信サービスの設備を公開した。開発の主役を担うのは米スタートアップのアルティオスター・ネットワークスで、大手の通信会社が同社の技術を全面採用するのは初めて。高額な専用機器でなく市販のサーバーを活用し設備投資をライバルの5分の1程度に抑える。楽天は新技術の採用で通信料金の競争で優位に立ちたい考えだが、十分な通信品質が確保できるかリスクもはらむ。

都内で公開した設備はオフィスビルの執務室の一角に冷蔵庫大のラックにサーバーが収納されているだけだ。一般的な携帯電話の基地局にある交換機などは見当たらない。楽天モバイルネットワークのタレック・アミン最高技術責任者(CTO)は「楽天は無線の基地局部分を含めてソフトウエアで展開する世界初の事業者だ」と話す。

一般に携帯電話事業者の設備投資の8割近くは、無線基地局部分が占めるといわれる。この部分のコストを抑えられれば、システム全体の投資負担を大きく軽減できる。NTTドコモKDDIは現在の携帯電話サービスを支える4G通信網に3兆~4兆円を投じた。楽天は約6千億円と見積もっており、単純に計算すれば5分の1程度だ。

次世代の高速通信規格「5G」の機能も先取りする。アミン氏は「アンテナ部分を5G対応に替えるだけで、5Gネットワークを導入できる」と強調する。1兆円かかるといわれる4Gから5Gへの移行の際の大規模投資も不要だ。

後発の楽天にとって新規の顧客を呼び込むためには通信料金の価格設定は大きな意味を持つ。今回の発表会で三木谷浩史会長兼社長は料金についての言及はなかったが、ライバルに対抗できる料金プランを用意するための一手がアルティオスターへの出資と協業だ。

楽天の通信網構築の陣頭指揮をとるアミン氏は米国3位のTモバイルUSや華為技術(ファーウェイ)などを経て、16年9月に参入したばかりのインド携帯電話会社リライアンス・ジオ・インフォコムに入社した。そこでアミン氏が採用したのがクラウド型無線アクセスネットワーク(クラウドRAN)と呼ばれる通信方式だ。

従来型の基地局に比べ設備が簡素化でき、システム全体のコストが抑えられる。リライアンスはその後、わずか1年半でインドでのシェアを15%まで伸ばし、同国で3位にまで浮上した。

そのアミン氏が推すクラウドRANを駆使してサービス展開していたアルティオスターに三木谷氏は目をつけた。

調査会社のMCA(東京・千代田)の大門太郎研究員は「設備投資が軽い分、楽天の携帯サービスの料金が安くなる可能性は大いにありえる」と分析する。しかし、「新参者」同士の連携には不安も残る。

アルティオスターは出資を受ける米シスコシステムズや、米インテル、ノキアなどと共同でシステムの課題を解決しているという。しかし、通信障害が頻発したり、速度などが遅ければ利用者はすぐに離れていく。

楽天は人口の多い首都圏などでは自前で基地局を整備する一方、地方はKDDIの回線に相乗りする。都市部から地方への接続などに支障が生じる可能性もある。

ソフトバンクも通信事業に参入した06年当初、ネットワークの整備が追いつかず、繁華街や地下鉄の駅などでつながりづらいなどの問題が発生していた。「ネットワークの運用実績が初めてであることがリスクになるだろう。(地方など)通信エリアの構築がうまくいくかも焦点になるだろう」(大門研究員)とみる。

ドコモやKDDIなど既存の通信会社は一度構築した通信システムを新たな方式に切り替えることは難しい。後発ゆえの先端技術の導入が吉と出るか凶と出るのだろうか。(大西綾、堀越功)

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