2019年4月26日(金)

奄美の宝、外来種から守れ マングース駆除隊奮闘

九州・沖縄
2019/2/19 16:43
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「生きた化石」と呼ばれるアマミノクロウサギに、るり色の羽を持つカラス科のルリカケス。希少な動物が数多く生息する奄美大島(鹿児島県)は、豊かな自然を生かし世界自然遺産登録を目指している。その保護・保全を阻むのがマングースなどの外来種生物だ。「奄美の宝は世界の宝」。地元では駆除をはじめとして、多様な生態系を守る取り組みに地道に汗を流している。

探索犬を使ってマングースを探すマングースバスターズの山下亮さん(鹿児島県龍郷町)

探索犬を使ってマングースを探すマングースバスターズの山下亮さん(鹿児島県龍郷町)

「カムヒア(来い)」「ウエート(待て)」。奄美大島の龍郷町のうっそうとした森の中で、2匹の探索犬に指示する声が響く。マングース駆除のために組織された「奄美マングースバスターズ」のハンター、山下亮さん(46)の巡回だ。マングースが見つかれば、木の穴や岩の隙間に追い込んで捕獲する。

埼玉県育ちの山下さんは、自然や動物に携わる仕事がしたいと、ニュージーランドで外来種駆除に関する仕事をしていた。現地で奄美大島のマングース被害の話を聞き、帰国後に島に移住。奄美の自然に魅了されて18年になる。

やりがいを感じるのは「アマミノクロウサギのフンを道で見つけた時」。絶滅危惧種が生きている痕跡が何よりうれしいと笑顔を見せる。

昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は、日本政府が世界遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について「登録延期」を勧告した。政府は最短で2020年の登録を目指し再挑戦しているが、外来種から島の固有種をいかに保護するかが大きな課題になっている。

特に脅威なのがマングースだ。ハブ被害を減らそうと1979年に30匹が島に放たれたが、夜行性のハブに対し、マングースは昼行性で、対決は不発気味。それどころか外敵に慣れていない島の希少生物を次々と捕食し、ピークとなる2000年にはマングースは1万匹にまで増えた。

05年に外来生物被害防止法が施行されると、環境省の奄美自然保護官事務所はマングースバスターズを結成。現在は40人体制で、山下さんのように島外から来た人もいるが、もともと奄美出身で参加している人が半分以上を占める。探索犬は13匹、捕獲用わなは島内3万カ所に設置している。

成果はマングースの捕獲数に表れてきた。05年度の約2600匹から、17年度には10匹に。18年度はまだ1匹だ。マングースの数が大きく減ったためとみられ、島での生息数は約50匹にまで減ったと推測されている。ピークの1%以下だ。

足並みをそろえるように、アマミノクロウサギなどの固有種の生息数は回復傾向にある。もっとも山下さんは「最初に放たれたのも30匹だけだったが大きく増えた。警戒心の強い個体もいるため油断はできない」と手を緩めない。

カヌーに乗ってマングローブ林を観察する人たち(鹿児島県奄美市)

カヌーに乗ってマングローブ林を観察する人たち(鹿児島県奄美市)

マングースバスターズは中学校や高校に出向いて固有種と外来生物についての授業も行う。筒状の捕獲用わなを見せると、生徒らは「島にはこのわなが3万個も設置されているのか」などと驚きの声をあげた。

マングースバスターズのリーダー、松田維さん(49)は授業の最後にいつもこう締めくくる。「外来生物自体は悪くない。持ち込んだ人間がしっかり責任を持つべきだ」。奄美の宝を世界の宝にするため、次世代に教訓を残すことも大きな使命の一つと考えている。

■「東洋のガラパゴス」固有種150超 野生ネコ被害も
 政府は世界遺産登録候補としている奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の4島に、固有種が75種いると説明している。このうち奄美大島に生息するのがアマミノクロウサギなど27種。植物も含めると150種超で、同島が「東洋のガラパゴス」と呼ばれるゆえんだ。
 奄美大島と徳之島だけに生息するアマミノクロウサギは、耳と後ろ脚が短いなどウサギの最も原始的な特徴を残す。地面で採食・営巣をする鳥のアマミヤマシギ、緑の地肌に金色の斑点模様を持ち「日本で一番美しいカエル」と言われるアマミイシカワガエルなどがよく知られる。
 かつてはユーラシア大陸と陸続きだった奄美群島。約200万年前に海面上昇や地殻変動で切り離され、取り残された動植物は外的要因の少ない環境で独自の進化を遂げたともいわれる。
 固有種を巡っては近年、捨て猫が野生化した「ノネコ」による被害も増加。島の自治体は去勢手術を施すなどしているが、マングースとともに長期的な対策が必要になっている。

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