働き方進化論 「公私融合」に道あり
突き抜ける職場(3)

2019/2/20 2:00
保存
共有
印刷
その他

「ソウ・エクスペリエンス」ではスタッフが子供を社内で遊ばせながら働ける(1月、東京都渋谷区)

「ソウ・エクスペリエンス」ではスタッフが子供を社内で遊ばせながら働ける(1月、東京都渋谷区)

商品を梱包する男性のまわりで3人の子どもが遊ぶ。ここはギフトの企画・販売を手がけるソウ・エクスペリエンス(東京・渋谷)のオフィス。子どもが泣き出せば近くにいる社員がごく自然にあやしにいく。

「目の届くところに子どもがいるので安心」。長女(3)を連れてきた米山玲子(42)はいう。約70人の社員のうち、5人が必ず子どもを連れてくる。

社長の西村琢(37)は「目先は生産性が低下しても長い目でみれば会社の成長につながる」と話す。子連れ出勤を認めた2013年に年間2万6千個だったギフトの出荷個数は18年は13万3千個になった。人材の定着にもつながっている。

日本の働き方改革は残業の削減や休暇の取得推進など働き過ぎを改め、私的な時間を確保することに主眼を置いてきた。だが場所や時間の条件さえ整えば、仕事の合間に育児や介護もできる方が合理的だ。

仕事と生活を明確に分けて調和させるワークライフバランスではなく、曖昧にしてどちらの充足度も高めるワークライフインテグレーション(統合)の方が働きやすい人もいる。人材サービス会社パーソルホールディングス傘下のパーソル総合研究所は育児や介護などが理由で働いていない705万人のうち、自宅近くにサテライトオフィスがあれば働く可能性のある人は136万人いるとはじく。

IT(情報技術)によって働く場所の自由は広がる。総務省の17年調査では、従業員100人以上の企業でテレワークを導入しているのは日本は13.9%だが米国は85%、英国は38.2%で改善の余地は大きい。

「公私融合で結構。1日を仕事と私生活でモザイク状に使えばいい」。日本IBMには繁忙期はフルタイム勤務だが、それ以外の時期は1日2時間働けば勤務したと認める制度がある。人事部門担当の山口俊一(57)自身も千葉市のオフィスに行くのは週1、2回で、ほかの日は東京都内の自宅などで働く。同社は職能給ではなく職務給制度をとっており「評価は成果で決まる」(山口)。自らの生産性を高められる働き方を各自が模索する。

「満員電車を避けて午前10時に出社」「月3回は在宅勤務、週1回は副業」――。ソフトウエア開発のサイボウズで働く深沢修一郎(29)は昨年、社内のイントラネットで宣言した。同社では500人の全社員が働き方を示し、全て閲覧できる。各自が「働き方宣言制度」で互いの働くスタイルを確認し、認め合う。

もとは会社が用意した時間や場所など9種類の働き方から社員が選んでいた。だが「9種類でもカバーしきれない」。自らが育児休暇を取り、子連れ出勤もした社長の青野慶久(47)はお仕着せの制度では社員のやる気や実力を引き出せないと判断した。

日本企業は仕事を主、私生活を従とする人材を前提に成り立ってきた。少子高齢化がさらに進めば、仕事や育児・介護、地域活動などを同じウエートで背負う人も増える。才能や意欲を持つ人材を眠らせない働き方の模索が続く。(敬称略)

【「働き方進化論 突き抜ける職場」連載一覧】
(1)成果も時間も濃密に
(2)肩書は「私」フリーで複業
(3)「公私融合」に道あり
(4)脱せるか「やる気後進国」
(5)がむしゃらは許せるか
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]