「#保育園落ちた」今年も 待機児童の解消実現せず
4月の認可保育園の入園可否が明らかになる時期を迎えた。認可保育園に入れない「待機児童」の解消は実現せず、交流サイト(SNS)の「#保育園落ちた」には落選を嘆く保護者の書き込みが今年も相次ぐ。自治体に異議を申し立てたり、保育園の増設を訴えたりする動きも広がっている。

「心配していたことがまさか現実になるとは」。2月下旬、市役所から届いた次男(1)が保育園へ入れないことを知らせる通知に、東京都町田市の男性会社員(33)は言葉を失った。最大枠の第3希望まで保育所を書いたが、入所内定が出たのは長男(3)のみ。認可外保育園も検討したが、保育料の高さなどから見送る予定だ。
妻(32)は週に3回、サービス業でアルバイトをする。男性と交代で働くため夜勤にしか出られず、兄弟2人が4月から入園できれば就職活動をして正社員の職に就く予定だった。「早く夫婦共にフルタイム勤務をして、少しでも多く教育費を稼ぎたいのに……」。夫は焦りをにじませる。
「なぜ落とされたのか納得がいかない」。自治体から2019年度の保育園の当落通知が届き始める1月末以降、短文投稿サイト「ツイッター」やブログなどには保護者の悲痛な声が相次ぎ投稿されている。「母子家庭、正社員勤務なのに落とされた」「両親共にフルタイム。祖父母は県外に住んでいるのにどうして」。入園を認めないとする通知には明確な理由の記載がなく、保護者の憤りは強い。
泣き寝入りはできないと、保護者らが自治体に不服を訴える動きも広がってきた。認可園に落ちた杉並区の保護者らは13年、集団で自治体側に異議を申し立て、区は1年で約500人の受け入れ枠を増やした。当時のメンバーは現在も年2回ほど集会を開き、保育情報や保護者の悩みを共有する場をつくる。
子育て中の保護者らでつくる「保育園を考える親の会」では、自治体の決定に対して異議を申し立てる「審査請求」の方法をホームページで指南。普光院亜紀代表のもとには「自分の自治体でも使えるか」などの問い合わせが増えているという。審査の見直しを求めたり、保育園増設への機運を高めたりする狙いがある。普光院さんは「落選の決定が覆ることは少ないが、『こんなに困っている』という思いを行政に伝えられる」と話す。
行政対応に詳しい竹内彰志弁護士も、ホームページで審査請求の定型文書を17年から公開する。自身の子供が待機児童になった経験から「当事者となる保護者は毎年入れ替わり、継続して行政に声を上げられないことが問題。審査請求をすれば翌年度の定員が増える可能性もある」と話す。
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待機児童、都市部で高水準
待機児童の数は、都市部を中心に依然高水準だ。2018年4月時点で全国で1万9895人と17年比で6186人減り、08年以来10年ぶりに2万人を割り込んだが、都市部では数百人規模の子供が待機状態の自治体もあるという。
認可園に落ちると保護者は無認可園を探したり、育休を延長したりして対応するが、やむなく就労を断念する場合もある。キッズライン総研(東京)は18年、「保活」経験のある全国約560人の保護者を対象に調査を実施。「保育園に預けられなかったらどうするか」との質問に、47.8%が「育休の延長」を挙げた一方、「会社を辞める」との回答が9.9%あった。
保育事情に詳しい恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「待機児童は減少に向かっているが、保育園に子供を入れたいと考える保護者も増えている。現行の行政の対応は増え続けるニーズへの後追いに終始し、『焼け石に水』の状態。誰もが保育園に入れるよう抜本的な改革が必要だ」と話す。