国境の壁建設、法廷闘争へ 公約実現になお不透明さ

2019/2/16 18:19
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【ワシントン=永沢毅】国境の壁建設を目的としたトランプ米大統領による非常事態宣言の波紋が止まらない。野党・民主党が「権力の乱用」と強く反発したのに続き、市民団体などが宣言の差し止めを求めて提訴する事態に発展した。民主主義の牙城だった米国で強権的な政治手法が横行すれば、世界に広がる大衆迎合主義(ポピュリズム)にも影響を及ぼしかねない。

ホワイトハウスで非常事態宣言の記者会見に臨むトランプ米大統領(15日)=AP

ホワイトハウスで非常事態宣言の記者会見に臨むトランプ米大統領(15日)=AP

リベラル系市民団体のパブリック・シチズンは15日、宣言は憲法違反だとしてワシントンの連邦地裁に提訴した。米国最大の人権団体、全米市民自由連合(ACLU)も来週中に提訴する方針を明らかにした。カリフォルニア州やニューヨーク州も法廷闘争を検討している。米メディアは少なくとも2件の提訴があったと伝えた。

非常事態宣言は1976年に成立した「国家非常事態法」に基づく。宣言をすれば国家が非常事態に直面した際には議会採決を経ずに大統領が資金の使途を決めることができる。だが、外国からの差し迫った危機があるなどの場合に限られていると解釈するのが通例で、議会の承認を回避するために宣言するのは極めて異例だ。

米では権力の集中を防いで権力乱用を防ぐため、三権分立が憲法で定められ、税金の使い道を決める予算編成は議会が担う。今回の非常事態宣言はこれを無視するもので、非常事態宣言の条件に加え、大統領が非常事態宣言によって予算編成を議会の承認を得ないまま自由に行えるかどうかなどが論点になる。

トランプ氏も15日の記者会見で今回の宣言について、法廷闘争に持ち込まれる可能性があると認めていた。そうまでして強硬策に出た背景を探ると、20年大統領選への危機感があった。米メディアによると、昨年の米中間選挙で民主党が躍進し、自らの保守層をつなぎとめるためには壁建設を実現しなければならないとの判断に傾いた。

法廷闘争では、トランプ氏は下級審では敗訴となる可能性を認めつつも「最高裁判所では勝利するだろう」と楽観視する。イスラム圏7カ国からの入国を制限する大統領令を巡っては、米西部ワシントン州が政府を提訴。連邦地裁は一時差し止める命令を出したが、その後に連邦最高裁が一転して制限措置を支持する判断を示した。最高裁判事の構成が保守派多数となっていることが背景にある。

公約の実現のためなら憲法違反も疑われる強権的手法を辞さないトランプ氏。その姿は議会を無視し、国民を抑圧してきたアジアやアフリカなどの独裁国家にも重なる。こうした地域に米国は民主主義を御旗に圧倒的な軍事力で介入してきた歴史がある。しかし、今その米国ですら強権的な政治手法が勢いづこうとしている。

主要米メディアの多くもトランプ氏の非常事態宣言について「壁建設も非常事態宣言もごまかしにすぎない」(ニューヨーク・タイムズ)などと批判的な論調を展開している。ワシントン・ポストの安全保障担当のコラムニストであるマックス・ブート氏も「非常事態宣言は米民主主義の規範への新たな攻撃だ」と強く批判した。

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