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はじく極意 ハスの葉に 東洋アルミ「ヨーグルトつかない蓋」(もっと関西)

ここに技あり

最近、アルミの蓋にヨーグルトがべったりと付着しなくなった。アルミ箔国内最大手の東洋アルミニウム(大阪市)が2010年に「ヨーグルトがくっつかない蓋」を実用化したためだ。国内で販売されているパック型ヨーグルトの大半に採用されている。

加工アルミ箔の製造拠点である群馬製造所(群馬県伊勢崎市)内の加工開発センター。同社が開発した「トーヤルロータス」と一般的なアルミ蓋を並べ、両方に注射器で吸い込んだヨーグルトを落として斜めにする。従来のアルミ蓋にはヨーグルトが糸を引くようにはりつき、きれいにふき取ることはできない。片やトーヤルロータスの上に落としたヨーグルトは丸い粒の形を保ったまま転がり落ちた。

07年、「ヨーグルトが付着しない蓋を開発せよ」との社命を背負った関口朋伸氏は行き詰まっていた。水をはじくフライパンやはっ水性の高い繊維などあらゆる素材を研究したが、蓋の開発には結びつかない。神様にすがるしかなくなり、製造所近くの神社にお参りすると、関口氏の目に沼に浮かぶハスの葉が飛び込んだ。淡い期待を抱いて葉の先にヨーグルトを一滴垂らすと、水と同じように丸い粒となって転がり落ちた。

急いで顕微鏡でハスの葉の構造を分析し、表面に繊毛によってできる細かな凹凸があることを確認。繊毛1本1本の間にできる空気の層がクッションのように水をはじくことも分かった。そこでアルミ箔の表面に直径数ナノ(ナノは10億分の1)メートルの粒子を無数に配し、人工的にハスの葉のような凹凸構造を作り出してヨーグルトをはじくようにした。

ただ、実用化には壁があった。飛行機やトラックでヨーグルトを輸送すると、振動で粒子が外れてしまう。そこで、アルミ箔と粒子を接着するために張り合わせていた樹脂のフィルムを工夫。材料や配合などを変えることで固着性を高め、粒子が外れないようにした。この凹凸構造や固着の技術、材料の選定や配合について日本や海外で特許を取得している。

最近は様々な分野への応用も進む。清水建設と共同で建設用の型枠「アート型枠」を開発。はっ水性を高めた型枠にコンクリートを流し込むことで、型枠表面にコンクリートが付着しなくなり、建築物の表面がきれいに仕上がる。また、クリームが付着しないケーキ用の包装材も実用化した。今後はマヨネーズなど食品の容器や化粧品のボトルの内側に加工を施し、内容物を簡単に最後まで出せる用途などへの採用も目指す。関口氏は「生活を便利にできる技術として今後も活用法を広げていきたい」と意気込む。

文 大阪経済部 長田真美

写真 目良友樹

カメラマンひとこと 注射器から押し出されコロコロと傾斜のある試験台を転がる丸い粒はエアガンに使うBB弾のようだ。小さな玉に立体感を出すためサイドから光を当て、次々と落ちていくキャッチーなカットを狙う。イメージ通りの写真を撮り終え、未加工のシートに残ったヨーグルトを見ると、子どもの頃、蓋をなめて親に叱られたことがふと思い出された。

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