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大谷20発、菊池8勝 成績予想の根拠とは?

野球データアナリスト 岡田友輔

大谷翔平(エンゼルス)は2割6分7厘、20本塁打、菊池雄星(マリナーズ)は8勝8敗、防御率4.20――。データ分析サイトを運営する米国のベースボール・プロスペクタスが先日、こんな2019年シーズンの成績予想を発表した。

大リーグでは毎年、複数のデータ会社が全選手の成績予想を出している。ひいきの選手がどれぐらい活躍するかはファンであれば気になるところだ。こうした予想は何が根拠になっているのだろうか。

最も重視されるのが過去数年の実績。直近2~5年程度の成績に基づき、近いほど重みをつけて反映させるのが一般的だ。海外やマイナーなど違うリーグでの成績も過去の例などから価値を換算して組み込む。

今季の菊池の成績について、米ベースボール・プロスペクタスは8勝8敗と予想した=共同

しかし、実績がすべてではない。年齢的に発展途上にあるのかピークを過ぎているのか。似たタイプの選手はどのようなキャリアを歩む傾向があるか。体格や故障歴はどうか。使用球やホームランテラスの新設など環境の変化による影響はどうだったか。様々な要素を加味し、最終的な予想値が決まる。大リーグの各球団は独自に自軍や補強候補となる選手の成績予想に取り組み、その精度を高めようと日々工夫を重ねている。

先行投資だからこそ大切

予想が大切なのは、球団にとって選手との契約が先行投資だからだ。年俸が期待値に基づいて決まる以上、前提となる数値がなければ話が始まらない。日本の球団が大リーグほどシビアに成績予想をしていないのは、年俸が期待値よりも論功行賞や年功序列的な要素で決まる傾向が強いからだろう。

データ分析や球団へのコンサルティングを手がけるDELTAでは直近3年間の成績をベースに、日本のプロ野球全選手の成績を予想している。たとえば今季、広島から巨人に移籍した丸佳浩は打率2割9分4厘、28本塁打。96四球を選んで出塁率4割1分6厘、長打率5割3分1厘を残し、104点分の得点創出に貢献するとみている。丸の人的補償として広島に移籍した長野久義のマイナスを考慮しても昨季に比べて35~40得点、3~4勝の上積みを巨人にもたらすと考えられる。

そうはいっても、こうした理屈は現実と一致するとは限らない。それが面白いところであり、難しいところでもあるのだが、大リーグでも現段階で予想の精度は6割程度と百発百中からは遠い。

ブレを生む理由はいくつかある。とりわけ大きいのが違うリーグへの移籍に伴う不確定要因だ。日米など国をまたぐとパフォーマンスの変動は一段と大きくなる。過去の例などに基づいて予想に調整を加えることはできても、個人差までは読み切れない。

海を渡って変わるのは野球のレベルだけではない。野球の質、求められるプレー、使用球、球場、練習環境、人間関係、言葉、食事に至るまでグラウンド内外のすべてが初めての体験となる。それに伴う精神的負担とも戦いながら、これまでと同じようにプレーするのは容易ではない。外国人が期待に応えられないとファンからはすぐに「またダメな外国人を連れてきた」との声が出るが、有能なサラリーマンでも慣れない海外出張先で普段と同じ働きをするのは難しいだろう。

新人の予想も一筋縄ではいかない。全国レベルで活躍した選手ならまだしも、地方の高校生や大学生になると十分なデータが集まらない。このあたりはスカウトの腕の見せどころになる。一方、東京六大学のようにデータが集まり、過去にも多くのプロ選手を輩出しているリーグになると、かなり精度の高い予想ができる。この場合、重要になるのが周囲に比べた「傑出度」。投手であれば単純に何勝したかだけでなく、投球内容がどれだけ際立っていたか、といった視点が必要になる。

チームの起用方針も成績を大きく左右する。同じ選手でも監督が交代したり、チーム方針が変わったりすると使われ方がガラリと変わる。たとえば昨年の西武が森友哉を捕手で使うかどうかは首脳陣の判断に懸かっていた。時期尚早と考えれば出場機会は減っていた可能性が高いが、第三者の成績予想でそこまでは織り込めない。

ゲーム、一大市場を形成

ところで、米国で球団以外の多くの会社が成績予想を出している背景をご存じだろうか。実は「ファンタジーベースボール」というゲームが大きく影響している。これは実在する選手を参加者がドラフトするなどして自分だけの仮想のチームを編成し、選手の現実の成績に基づいてポイントを競うシミュレーションゲームだ。紙や鉛筆の時代には一部のコアなファンの遊びだったが、インターネットの普及とともに参加者が爆発的に増え、いまや一大市場を形成している。

毎年、ファンはゼネラルマネジャーとして自らのチームを組織する。そこで欠かせないのがデータ会社による成績予想。日本の競馬ファンが新聞の予想を参考に馬券を買うようなものだ。よく当たる会社のサイトは閲覧数が増え、広告料などの収入も大きくなる。つまり、成績予想でビジネスが成り立つほどファンタジーベースボールには多くの参加者がいる。

日本でも同じようなゲームを根付かせようという動きがあったが、今のところ成功していない。人気の野球ゲームといえば「ファミスタ」や「パワプロ」など選手としてプレーをする対戦型のタイプが主流となってきた。チームをつくりたいのか、プレーをしたいのか。このあたりのファン心理にも、野球の枠を超えた日米の価値観や嗜好の違いが垣間見えるように思うのだ。

 岡田友輔(おかだ・ゆうすけ) 千葉県出身。大学卒業後、民放野球中継のデータスタッフやスポーツデータ配信会社勤務を経て2011年に独立。株式会社DELTAを立ち上げ、野球のデータ分析やプロ球団へのコンサルティングなどを手がける。

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