住友鉱山、EVシフトで銅山投資加速 新中計発表

住友金属鉱山は14日、2022年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。生産トラブルなどにより19年3月期の業績見通しを下方修正するなか、4月末に権益取得予定のチリの銅鉱山開発を進めるなど3年間で過去最高の計4900億円を投じる。電気自動車(EV)やあらゆるものがネットにつながるIoTシフトによる金属需要増を受け、強気の投資に打って出る。
「かつてない規模の投資を予定している」。14日に開いた記者会見で住友金属鉱山の野崎明社長はこう強調した。4900億円という投資額は現中計の実績予想よりも25%大きい規模だ。
チリ北部のケブラダ・ブランカ鉱山で21年の新鉱床の生産開始に向けて開発を進める。25%の権益取得額も含めた総投資額は1350億円。年産24万トンを見込む大型プロジェクトだ。
ニッケルやコバルトが原料で、主にEV向けのリチウムイオン電池材料事業では、28年3月期までに生産量を18年の2倍超となる月産1万トンを目指して順次能力増強をする方針も示した。まず22年3月期までに350億円を投じる計画だ。
住友鉱山は19年3月期の最終利益予想を18年11月の公表時より2割下方修正し、640億円とした。フィリピンで稼働中の製錬所で生産トラブルが相次いだことが主な要因だ。足元では米中貿易摩擦による金属価格の下落リスクもある。
そのなかでの積極的な投資の背景にあるのが、EVやIoTの普及を追い風とする金属需要の拡大だ。
鉱山会社などで構成する国際銅協会(ICA、本部は米ワシントン)のアンソニー・リー会長は「50年の世界需要は足元の4倍にあたる1億トンを大きく超える」と指摘。EV向け電池材の原料で、住友鉱山が扱うコバルトの需要は10年間で2倍以上になると予測されている。
一方で大規模投資にはリスクがつきものだ。同社は三菱マテリアルなどの国内同業に比べ、積極的に大規模な投資に踏み切ることが多いが、投資が裏目に出て多額の損失を被ることも少なくない。
11年に5億ドル(約555億円)を投じて参画したチリのシエラゴルダ銅鉱山では、金属価格の下落や開発費の膨張にあえぎ、17年3月期までの2期合計で1000億円を超える減損損失を計上。両期とも最終赤字となった。東南アジアで進めるニッケル製錬事業では、インドネシアの製錬所操業に向け最終調査を進めるが、フィリピンでの生産トラブルの再発防止など課題も多い。
金属価格下落などの投資リスクについて野崎社長は「資源産業には当然ある」としつつも、「最初に掲げた計画を推進すれば収益は上がる」と自信を示してみせた。それらの計画を着実に実行できるか、住友鉱山の実力が試される。