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ダボスとのギャップを憂う(大機小機)

今年6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で、日本は初めて議長国になる。こうしたなか、今年1月下旬の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した安倍晋三首相のスピーチは、大きな注目を集めた。スピーチの約3分の1は日本経済の改革成果について、残りは不安定化する世界をどう運営するかについて述べていた。まさにG20議長としての格調高い議論に終始した。

具体的には「今後の世界ではビッグデータをどう活用するかで経済社会の在り方が大きく変わる」「この点についての新たな世界ルールをつくる」「大阪会議がその歴史的一歩になる」といった内容だ。こうしたトラックを世界貿易機関(WTO)の下でつくると明言したことには、高い称賛の声があがった。

その首相が日本に戻ったとたん、厚生労働省の統計不正を巡るワイドショー的な議論に忙殺されている。確かに、統計不正は明らかな法律違反だし、身内の委員会で幕引きしようとした厚労省の対応も問題だ。しかし、これをもってアベノミクスを全否定するような議論は唐突すぎる。

実質賃金がマイナスだったことを批判する声もあるが、賃金は遅行指標だから、景気回復の途上ではおかしな話ではない。逆に、バブル崩壊後には長い期間にわたり、実質賃金が上がり続けた。

アベノミクスの残された問題は、生産性がなかなか向上しないことだ。生産性が上がらない限り実質賃金も増えない。それには思い切った構造改革を進めて産業の新陳代謝を高めることや、規制改革を促進することが必要だ。しかし、実質賃金が上昇しないことを批判する一部の野党やメディアはこうした改革に批判的だ。明らかな矛盾である。『良き社会のための経済学』の著者ジャン・ティロール氏の言葉を借りるなら「自分の足に弾丸を撃ち込むようなもの」ということになろう。

統計不正の背景は、霞が関で統計専門職が重視されていないことや、統計部局への予算・人員配分が不十分なことが大きい。これを是正するような建設的な議論こそ、国会のテーマではないか。

ダボス会議後の日本の政策議論を聞いていると、経済問題に対する熱意とリテラシーにおいて、あまりに大きなギャップがあることを思い知らされる。

(夢風)

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