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文化財保護、関西が先導 明治以降の歩みたどる企画展(もっと関西)

カルチャー

歴史遺産を守り伝える体制が国や自治体によって構築された明治以降の歩みを振り返る企画展が、京都と滋賀で開催されている。活用重視に舵(かじ)を切る改正文化財保護法が4月に施行されるのを前に、先人が幾多の困難をどう乗り越えたのかを物語る資料から学べるものは多いはずだ。

帝国博物館総長が京都府知事に宛てた「社寺宝物保管方の件」(京都府行政文書、京都府立京都学・歴彩館蔵)=京都府京都文化博物館提供

京都府京都文化博物館(京都市)で催されているのが「古社寺保存法の時代」(3月3日まで)。明治30年(1897年)に制定された古社寺保存法は、国宝保存法(1929年)を経て現在の文化財保護法(50年)へと連なる文化財保護行政の原点といえる。

学芸員の森道彦さんは「文化財保護には宗教行政や産業振興策などの要素が複雑に絡む。社会を挙げての体制づくりには、多くの社寺を抱える京都や奈良など関西が先導的な役割を果たした」と説明する。

神仏分離で散逸

展示室に並ぶのは明治期の京都府行政文書を中心に計64点。文字史料が多く一見とっつきにくいが、添えられている丁寧な解説を読み進めば、時代のうねりを生々しく感じとれる。

文化財修復の状況を詳細に記録した「新納忠之介調査手帳」(公益財団法人美術院蔵)=京都府京都文化博物館提供

人々の「古器旧物」への関心は江戸期から高かった。だが明治維新以降、所領を召し上げられた寺社は困窮。神仏分離令(1868年)をきっかけに仏像仏画の破壊が横行したことも加わって、伝来していた宝物の散逸が相次いだ。

国は当初は寺社に冷淡だったが、歴史資産を把握して保全しようと態度を改める。「海外の万国博覧会や国内の博覧会の隆盛を背景に、日本文化の情報発信や工芸・産業の参考に活用しようとの思惑があった」と森さんは指摘する。

ただ情報が集積され専門家が育つにつれ、文化財を取り巻く厳しい現状が明らかになった。「維持していきたいが資金がない」との寺社の悲鳴に応えて専門部署を設けるなど独自施策を試行し、国に提唱したのが京都府だった。

京都府と奈良県が連携して文化財保護の法整備を国に求めた「古社寺保存及び古社寺保存会組織請願」(1895年)が展示されている。2年後の古社寺保存法制定につながった請願書で「文言が法律の条文に採用されている」(森さん)。

観覧収入で保護

京都と奈良への国立博物館設置も、寺社が抱えきれなくなった文化財を保護するのが当初の主要な狙いだったという。出展品の一つ「社寺宝物保管方の件」(1890年)は当時の帝国博物館総長、九鬼隆一が京都府の北垣国道知事にあてて、博物館の観覧収入を社寺への補助金に充てる構想を説明した文書だ。

滋賀県立安土城考古博物館で開催中の「近江の考古学黎明期」展(滋賀県近江八幡市)

当時修理された書画や、修理技術者の資料も展示している。この時期に活躍した第一人者、新納忠之介の調査手帳には多様な文物の形状や構造、保存状態が図入りで克明に記録されており興味深い。

滋賀県立安土城考古博物館(近江八幡市)は「近江の考古学黎明(れいめい)期」を4月7日まで開く。田井中洋介学芸課長は「これまで県内で開催された考古学史の展示は、資料が潤沢な高度成長期以降が中心だった。今回は、学術調査が本格化した明治からの歩みを対象にした」と語る。

出展数は111点。明治と昭和に計24個もの銅鐸(どうたく)が出土した大岩山(野洲市)や、古代の地方政庁の姿が全国で初めて明らかになった近江国府跡(大津市)など、学史上の重要遺跡の出土品が顔をそろえる。「京都大や東京大など多くの研究者に調査地として重視された」(田井中課長)同県ならではの充実ぶりだ。

遺物に交じって紹介されている行政文書などの記録類が目を引く。明治期に羽栗古墳(大津市)で石棺が発見された状況を記した図面や、同じく明治期に松尾宮山古墳群(長浜市)で行われた発掘の様子を色鮮やかに描いた絵図などは、このたび再発見された資料で初めて公開されるという。

県内の小学校で収蔵・保管されている土器や石器、瓦類も紹介している。一般の目に触れる機会が少ない資料だ。「地域に埋もれている資料はまだ数多い。組織的に取り組まないと研究史の研究は進展しない」と田井中課長は強調する。

(大阪・文化担当 竹内義治)

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