マレーシア4.7%成長に減速 2018年 19年も低迷続く懸念
【クアラルンプール=中野貴司】マレーシア中央銀行は14日、2018年の実質国内総生産(GDP)が前年比で4.7%増えたと発表した。製造業や農業の生産が落ち込み、17年の5.9%増に比べ減速した。米中の貿易摩擦の影響などで19年も成長率が5%を割る見通しで、財政悪化に直面するマハティール政権の経済運営が問われることになる。

マレーシア中銀のノル・シャムシアー総裁は14日の会見で、「世界的な貿易摩擦の影響は18年は顕在化しなかったが、19年の成長見通しには負の影響を織り込む」と述べた。

18年はGDPの2割超を占める製造業が5%の成長にとどまったほか、農業や鉱業生産も前年比でマイナスに沈んだ。民間と公共部門の投資も共に低迷した。サービス業や個人消費は17年の伸び率を上回った。
国際通貨基金(IMF)は1月に19年の世界経済の成長率を下方修正しており、輸出国であるマレーシアも世界経済減速の影響が避けられない。加えて、消費税廃止による一時的な影響で18年は好調だった個人消費にも、ここにきて懸念材料が出てきている。
現地紙によると、政府は1月からミネラルウオーターを、消費税の代わりに導入した売上・サービス税の対象に加えた。売上・サービス税は対象品目が消費税より少なく、国民の生活負担軽減がうたい文句だったが、財政再建を迫られている政府はここにきて対象をじわじわと広げているようだ。
税率が5~10%の売上・サービス税の賦課によって日用品の価格上昇が進めば、低所得層を中心に購買意欲が鈍りかねない。
マレーシア国民が18年5月に政権交代を選択した一因は、生活苦への不満だった。政権交代直後は消費税の廃止がマハティール政権の支持を保つ要因となったが、財政の悪化と成長率の低下で政府が景気対策に資金を投じる余裕もなくなりつつある。世界経済が減速感を強める中で、新政権の経済運営は正念場にさしかかっている。