2019年8月23日(金)

宝塚ファン 愛ゆえの統率 私設組織、運営に協力(もっと関西)
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関西タイムライン
2019/2/14 11:30
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創設105周年を迎え、今なおファンを増やし続ける宝塚歌劇団。熱狂的なファンは同じ作品を毎日のように観劇し、グッズを買い込むだけでなく、劇団員の身の回りの世話などマネジャー的役割まで担うのだとか。広くエンターテインメントの世界を見回しても、熱狂の度合いでは最高峰と言える宝塚ファン。独特で奥深い世界をのぞいてみた。

宝塚大劇場公演の最終日、楽屋入りする生徒たちを大勢のファンたちが迎える(兵庫県宝塚市)

宝塚大劇場公演の最終日、楽屋入りする生徒たちを大勢のファンたちが迎える(兵庫県宝塚市)

元日に幕を開けた星組の宝塚大劇場公演が千秋楽を迎えた4日朝。宝塚歌劇団事務所の玄関付近には、退団するスターを送り出すため、おそろいの白い服を着たファンたちが整然と列になっている。楽屋入りする生徒(劇団員)を迎える「入り待ち」だ。

人気の高い生徒が来るとファンの中のリーダーが音頭を取って「千秋楽おめでとうございます」「いつも愛をありがとう」と声をそろえる。生徒も手を振ったり、一言あいさつしたりして応えている。

退団が決まり、この日が宝塚大劇場での最終日となるスター、七海ひろきが姿を見せた。ざわつきの後、ひときわ緊張感が張り詰める。冬の朝の引き締まった空気と白で統一された衣装。一糸乱れぬ声がけが相まって、どこか宗教的な荘厳さすら感じる。

生徒に贈るメッセージを決めて音頭をとったり、大勢を整理したりしているのは誰なのか? 組の中で序列の高いスターに付く私設ファンクラブ(FC)の人々だと言う。「入り待ち」に同行してくれた星組の生徒のFCに所属する大阪市の会社員Aさん(39)が教えてくれた。

年間およそ30回公演に足を運び、費やす金額は年間「給料1月分は超える」というAさん。FCの魅力の一つは、ホテルの宴会場などでお目当ての生徒のオフの姿に触れられる「お茶会に参加できること」。公演チケットが手に入りやすくなり、一緒に応援する仲間ができるのも楽しい。

FC会員はこうした恩恵を受けてばかりではない。「熱心な人たちは生徒が楽屋に出入りする時の『ガード』と呼ばれる役割も担う」(Aさん)

冒頭で書いたように、大劇場公演中、特に千秋楽は劇場周辺を「入り待ち・出待ち」のファンが埋め尽くす。そこで、混乱や一般の交通の妨げになることを防ぐため、FCのガードが組織的に人垣のようになり、ファンを誘導したりと自主的に場を統制する。

「入り待ち」では、次々楽屋入りする人気の高い生徒に、周囲の安全を確認するガードマンのような先導役がいることに気づく。これもFC幹部の役目の一つ。近くのロータリーまで乗り付けた車を運転するのもFC幹部だ。

FCの代表は生徒のマネジャー的な役割もこなす。公演期間中などは毎日休みなく「様々な連絡の代行や差し入れなど身の回りの世話をする」(Aさん)例も珍しくないようだ。

私設FCは歌劇団公式の「友の会」とは違い、あくまで生徒のファンたちが自主的に活動する非公式の組織だ。そんな組織がお茶会や会報などのファン活動にとどまらず、チケットの確保、「入り待ち・出待ち」の誘導などボランティアとして公演運営に協力している。

星組千秋楽の開演3時間ほど前、午前10時すぎにスターたちの楽屋入りが終わると「入り待ち」のファンたちも解散。この時もバラバラに散るのではなく、1列ずつ整然と去っていく。宝塚ファンの熱心さと統制の取れた行動に頭が下がる思いを抱き、入手困難な千秋楽のチケットを持たない記者はこの日の公演を見ないまま宝塚を後にした。

一口に宝塚ファンと言っても歌劇団全体のファン、各組のファン、演出家のファンなど様々だ。近年は映画館での公演中継など敷居の低い入り口も用意され、少数派だった男性ファンも増えているという。

しかし、本流はやはり特定の生徒を追いかけるコアなファンたち。「無名の時から応援してきた生徒さんの成長を見守る楽しさは何ものにも代えがたい」と、Aさんと同じFC所属の主婦Bさん(45)。記者は宝塚を見始めてまだ1年足らず。ヅカファンたちの熱気に感化され、そろそろひいきの生徒を見つけたい。そんな思いが強まってきた。

(大阪・文化担当 佐藤洋輔)

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