三菱日立の歓喜なき戴冠、大型ガスタービン初の世界首位に

2019/2/13 17:47
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2018年の大型ガスタービンの世界シェア(受注ベース)で三菱日立パワーシステムズ(MHPS)が初の1位になった。発電効率の高い超大型機種の開発競争で出力30万キロワットを超す「J形」を中心に実績を伸ばした。ただ、世界的な火力発電への逆風で市場の縮小は止まらない。先行きは楽観視できず、表彰台の中心には立っても手放しでは喜べないのが現状だ。

三菱日立パワーシステムズが製造する大型ガスタービン(兵庫県高砂市の高砂工場)

米調査会社マッコイ・パワー・レポートによると、18年の出力10万キロワット以上の大型ガスタービン世界シェアはMHPSが41%(前年は14%)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が28%(同47%)、独シーメンスが25%(同27%)だった。ガスタービン全体でのシェアもMHPSが30%と首位GEの33%に迫った。

14年に発足したMHPSは、大型ガスタービンを得意とした三菱重工業と中小型に強い日立製作所の長所を統合するのが狙いだった。当初から世界2強だったGEとシーメンスを超えるのを目標としており、ガスタービンでは5年間で目標を達成したことになる。

原動力となったのが「J形」と呼ぶ超大型のガスタービンだ。ガスタービンの排熱を使って蒸気タービンも回すガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC、複合発電方式)では、発電効率が64%と世界最高レベルに達する。

同社が「化石燃料を使用した最もクリーンかつ高効率な発電設備」とうたうGTCCは、従来型の石炭炊き火力発電に比べてCO2排出量を半分に抑えられる。18年にはタイでJ形8基からなる大型火力プロジェクトを受注。今月にも米バージニア州に新設される火力発電所に3基を納入することが内定した。

ガスタービンは大型化すればするほど発電効率が高まる。発電効率はわずか1%の違いでも発電事業者の燃料コストは年間なら億円単位で変動するため、効率の高い超大型機市場は世界の大手メーカーが技術開発でしのぎを削る主戦場だ。

その点、ライバルのGEの超大型ガスタービン「HA」は、発電効率で一時は世界最高の62.2%を記録したが、その後パキスタンで納入した製品で損傷トラブルが相次ぎ、市場から完全な信頼を獲得できていない。シーメンスも「HL」の開発を表明しているが、製品投入は遅れている。MHPSは「J形は99.5%の信頼性を誇る」として、発電事業者への売り込みを積極化してきた。

だが余韻に浸っている場合ではなさそうだ。市場の縮小ピッチは各社の想定を上回る。マッコイ社の調査では18年のガスタービンの世界需要が3180万キロワットと17年から15%縮小した。直近のピークだった15年の6010万キロワットと比べるとほぼ半分の低水準だ。

世界では脱化石燃料の動きが広がり、発電効率の低い石炭火力発電は日本国内も含めて各地で計画のキャンセルが相次ぐ。MHPSの安藤健司社長は「ガスタービンは50年ごろまで世界で年間5000万キロワット程度の新設需要がある」と見て、発電効率が67%に達する新機種開発のスピードを速める考えを示すが、エネルギー投資の流れが再エネに傾く中で先行きは不透明感を増している。

ガスタービンの市場が直ちにゼロになるわけではない。米国ではシェールガス開発技術が確立されて天然ガスの価格が低下し、ガス火力の新設や老朽した石炭火力の更新などの需要は根強い。

MHPSは残る市場を確実に押さえながら、21年度以降に世界で人員を3割削減する構造改革も同時並行で進めている。歓喜なき戴冠は今後に待ち受ける難路への入り口でもある。

(朝田賢治)

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