AI起業家、岡野原(36)の多次元頭脳
はみ出せ学界! ハカセが挑む(1)

はみ出せ学界!ハカセが挑む
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2019/2/24 2:00 (2019/2/25 2:00更新)
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■研究と社会貢献を両立

「研究を極める」と「社会の役に立つ」をどう両立するか。岡野原は少年時代から、実現には何が必要なのかが少しずつ見えていたのかもしれない。

岡野原(左)は大学時代、各分野で成果を出して論文を書いた(06年に豪州で開かれた国際学会)

岡野原(左)は大学時代、各分野で成果を出して論文を書いた(06年に豪州で開かれた国際学会)

様々な分野に手を広げる現在のスタイルをつくるきっかけとなったのが02年、優秀なプログラマーを発掘する国の「未踏プロジェクト」に東大2年生で選ばれたことだ。研究資金として与えられた約300万円は、自分でコンピューターを買ったり、共同研究する人を雇ったりするのに自由に使える。成果は個人に帰属するのでビジネスもできる。

大学入学当初はデータ圧縮にのめり込んだ岡野原に、未踏プロジェクトで指導担当だった竹内郁雄(72)が言葉をコンピューターで処理する「自然言語処理」の研究を勧めた。奥が深く、自分には極められなかったこの分野を岡野原ならできる気がした。岡野原は様々な分野を学ぶことの楽しさを知る。成果を出した岡野原は国の「スーパークリエータ」に選ばれた。当時の研究を基に作ったのが、のちに設立するPFIの事業となる検索エンジンだった。

竹内郁雄は未踏プロジェクトで岡野原を指導した

竹内郁雄は未踏プロジェクトで岡野原を指導した

米検索大手でインターン

起業にあたり、岡野原にはぜひとも見ておきたい会社があった。米グーグルだ。PFIにとっては検索エンジンのライバルだが、大学の同期や先輩など「自分の知る優秀な研究者やエンジニアが数多く働いている急成長ど真ん中の会社」だったからだ。

インターン(就業体験)制度を申し込む際、岡野原はPFIのホームページから自分の名前を消して申し込むと、06年夏のインターンに合格。自然言語処理のチームに2カ月間入った。

PFNはAIを基にロボット技術の開発にも乗り出した

PFNはAIを基にロボット技術の開発にも乗り出した

インターン後もグーグルへの入社意欲はわかなかった。「グーグルはかなりの規模になっていたし、自分が大きく貢献することはない」。それよりも起業家としての自分に賭けたい思いが一段と強まった。

■博士課程で基礎研究も

グーグルでの学びは多かった。その一つが研究から実用化までの一貫した取り組みだ。技術をサービスに落とし込む過程を見て「こうやればいいんだと分かり、自信が出た」。競争力のある会社には確かな研究開発力が必要なのを肌で感じた。経営とともに、基礎分野も極めるため大学の博士課程に進んだ。

■「週末のチョイスは医学書」

大学院では自然言語処理の研究だけでは飽きたらず、学位と関係ない音声認識などの研究にも手を広げた。「僕を何かの専門家だと思っている人は、『何でこんなことやっているんだろう』と思っていたはず」と笑う。

多忙な今も、暇を見つけては通勤中などにスマートフォンで1日4~5本の論文を読む。リラックスしたいはずの週末のチョイスは医学書。生理学、病理学、解剖学といった専門書を読みふける。

幾つもの分野に手を出すと「広く浅く」になりがちだが、岡野原はどれも論文を書きながら成果を出した。世界有数の国際学会で採択されたものも多い。研究室で指導していた辻井潤一(70)は「他の分野の研究をしていても、研究室として与えた研究がおろそかになることはまったくなかった」と話す。

大学院の指導教員、辻井潤一は岡野原を「エネルギッシュな常識人」と表現する

大学院の指導教員、辻井潤一は岡野原を「エネルギッシュな常識人」と表現する

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