2019年5月21日(火)

増えるインターナショナルスクール、専門家に聞く

2019/2/13 16:00
保存
共有
印刷
その他

英語で授業を行うインターナショナルスクールが日本で増えている。ソニーの平井一夫会長やメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長など有力経営者も輩出してきた。英語力や国際的な視野を身につけやすい環境が人気だ。ただし、インターは教育基本法が定める義務教育の対象外のため、義務教育違反になりがちという課題もある。現状と課題について、専門家に話を聞いた。

インターナショナルスクールタイムズの村田学編集長

大迫弘和・武蔵野大学教育学部教授(千代田インターナショナルスクール東京学園長)

専門サイト「インターナショナルスクールタイムズ」の村田学編集長

――日本のインター市場をどう見るか。

「まず2~6歳くらいが通う『プリスクール』と呼ばれる英語の幼稚園の市場が大きく広がっている。年間20~30校の規模で増え続けており、国内に500校以上あるだろう。外国人は20~30%もおらず、日本人がほとんどだ。学校の質にもよるが、6歳で卒園するときには英語で発表できるくらいの会話力が身につく」

「プリスクールの増加に伴って、初等部や中等部、高等部を持つインターも増えており、現在は国内に50校以上ある。毎年1~2校が新設されており、今後も増えていくだろう。年間の学費は250万円程度と富裕層向けだが、150万円程度の学校もある。セント・メリーズ・インターナショナルスクール(東京・世田谷)など老舗のインターは外国人の比率が高いが、新設されたインターは日本人が多い」

――インターの教育効果をどう考えるか。

「高度な英語力やコミュニケーション力が身に付く。日本でいうと外資系企業に勤める人に向いているのではないか。一方で、医師や弁護士になるためにはインターは向かないと私は思う。難関の国家試験は日本語で受験するため、合格するためには日本の学校を卒業した方が有利だろう。地元住民とのつながりが重要な政治家にも向かないと思う。インターは公立の小中学校に比べると、地域とのつながりが薄くなりがちとも言える」

――インターに通う日本人が増えている。

「日本は法律で小中学校が義務教育だが、インターはその対象外だ。二重国籍など特別な事情がある子供は自治体の教育委員会から『就学義務の猶予や免除』の認定を受けられるが、普通の日本人の場合は違反となる。このため、本来通うべき公立小中学校の校長から承諾を得て、不登校扱いとする方法がある。ただし学校によっては承諾がもらえず、違反したまま子供をインターに通わせる家庭もある。義務教育違反には罰則があるが、適用された事例は聞いたことがなく、グレーゾーンな状態だ。プリスクールが人気の理由は幼稚園のため、義務教育違反でないからだ」

大迫弘和・武蔵野大学教育学部教授(千代田インターナショナルスクール東京学園長)

――国内でインターが増えているのはなぜか。

「グローバル化の中で、世界で活躍できる子供を育てたい親のニーズが高まっている。英語の習得に加え、欧米など海外の大学で認められる入学資格の国際バカロレア(IB)などに基づくカリキュラムも人気だ。IBではプレゼンや議論、論文執筆といったアウトプットする力を重視するためだ。国内のインターを卒業した生徒の9割以上が海外の大学に進学している」

「インターは世界的に増加している。海外のインターは以前は外国人の子供が多かったが、最近はローカル(現地)の生徒が多い。韓国やベトナムなど多くの国のインターでもそうだ。日本でも同じ現象が起きており、千代田インターでも日本人が7割強だ」

――インター生は日本語の能力が英語よりも劣るのか。

「それは誤ったイメージだ。両親ともに日本人のインター生が日本で生活する場合、日本語、英語ともに母国語のように操れるバイリンガルになれる。学校では英語を使うが、社会全体の言語は日本語のため、母語の日本語が弱くなることはない。当校では毎日1時間の日本語の授業がある。インターでしっかり勉強した子供は森鴎外や夏目漱石も読めるし、日本語の文章も書ける。ただし米国などの海外で生活し、現地の学校に通う子供の場合、日本語との接点がどうしても減るため、日本語が不安定になる可能性はある」

――義務教育との兼ね合いをどう考えるか。

「インターに通う子供に対して、教育委員会や(本来通うべき公立小中学校の)校長には3つの対応がある。イエス(認める)とノー(認めない)、そして態度保留だ。担当者によって対応は多様で、すごくややこしい。教育の国際化のなかで、文部科学省もIBの認定校(小中高校)拡大などを進めている。インターもしっかりと日本人の教育に貢献しているのに、就学義務の免除の問題で行政の対応にばらつきがあるのはどうかと思う」

「インター生が日本の大学を受験するために以前は大検(現・高校卒業程度認定試験)が必要だったが、現在は国際的な評価団体の認定を受けたインターならば直接受験できるようになった。我々の教育価値を評価してくれたといえる。だがインターへの補助金はなお非常に少なく、高い学費の一因となっている。増やしてくれると良いのだが」

(聞き手は渡辺伸)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報