今日も走ろう(鏑木毅)

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保守的な組織 自らの志を呼び起こせ

2019/2/14 6:30
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厚生労働省の統計不正問題が大きな話題となっている。統計に関する人員がここ数年でかなり減らされたことも原因の一つのようだが、国民に大きな不利益をもたらした点においては弁解の余地がない。

15年間公務員として勤めた私は、厚労省のニュースを聞き、かつての職場の独特の雰囲気を思い出した。前例を踏襲し、新たな仕事は作らず、疑問に思ってもそのままやり過ごす公務員をよしとする暗黙の了解が支配する空気とでもいえようか。今回だってもしかしたら担当者レベルでは葛藤があったけれども、個人の正義感など組織の閉塞的な空気に押しつぶされたのだろうかと想像した。

自らプロデュースする大会で子どもたちと一緒に走る(群馬県太田市)

自らプロデュースする大会で子どもたちと一緒に走る(群馬県太田市)

公務員の大きな特徴は2点あると思う。一つは組織で軋轢(あつれき)を起こそうとも公正である限り身分は保障されることだ。かつて理不尽で納得できない案件に接した際、どうしても看過できず最終的には問題点を指摘した。背中を押してくれたのはこの身分の保障だった。

近年、役所のこうした体質が問題視され、モチベーションが低下していると聞く。公務員を志す理由は安定志向、それはネガティブな選択だと考えられがちだが、実際は違う。私の同期も総じて高い志を持ち入庁したが、役所は予想していた以上に保守的で閉鎖的だった。硬直した人間関係や調整事項の煩雑さにエネルギーを消耗し、当初の志が徐々にそがれ、次第に何かを新しく起こそうという気持ちが失われていったように思う。

もう一つの大きな特徴は、利潤追求にとらわれることなく公平な目線で世の中を改善する気持ちがあれば、社会を変革できる点だ。公務員時代の私の心を支えたのはこの誇りだった。

現在、各地でトレイルランニングの大会の開催に携わっている。これは過疎地域を活性化することにこのスポーツを役立てたいとの思いからだ。山間地の大会プロデュースなどにかかわっていると、自治体の関係者と接する機会も多い。そこでは住民と積極的にかかわりを持ち、地域をけん引する担当者も目にする。おそらく公務員としては職場で異彩を放つ存在だろうが、地域住民は生き生きとし、何よりも担当者自身が楽しみながら取り組んでいる。現代の社会では住民のために何をできるか、真剣かつ柔軟に考えられる公務員が求められているとあらためて感じる。

ところで私は公務員をやめると独立し、仕事を自由に切り盛りするようになった。公務員とは正反対で自分の責任で己の立場を守らねばならないけれど、仕事を存分にできる喜びも感じている。高齢化やさまざまな社会の変化で行政需要は増える一方なのに、公務員の人員は減らされ苦しい状況だ。全国で奮闘している公務員の皆さんにはぜひとも自らの志をいま一度呼び起こしてほしい。仕事は自ら動かす方が断然面白い。勇気を出して殻を破り一歩を踏み出すこと。皆さん一人ひとりには社会を変える力が委ねられていると信じている。

(プロトレイルランナー)

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