2019年5月21日(火)

タンチョウと共生模索 保護で増加、食害や事故相次ぐ

2019/2/12 12:23
保存
共有
印刷
その他

北海道に生息し、一時絶滅も危ぶまれた国の特別天然記念物タンチョウの増加に伴い、農作物の食害や車との衝突といった課題が浮上している。保護活動により、道内の生息確認数は1952年度の33羽から2017年度には約1600羽に増加。餌が少ない冬場は鶴居村や釧路市の給餌場に約9割が集まっており、環境省や自治体は共生の道を模索している。

北海道鶴居村にある酪農場の敷地内に入るタンチョウ(2018年12月)=共同

北海道鶴居村にある酪農場の敷地内に入るタンチョウ(2018年12月)=共同

鶴居村では、雪原を舞うタンチョウが観光資源となっている。一方で、酪農の牛舎近くで人や牛を恐れることなく餌を探す姿も珍しくない。酪農業の斉藤和弘さん(42)は例年5月に飼料用トウモロコシの種をまくが、「翌月にはタンチョウに芽を抜かれてしまう」と頭を抱える。

牛舎に入って飼料をついばむタンチョウもいるため、驚いた牛がけがをする恐れがある。環境省は2018年2月、タンチョウをドローンで追い払う実験を鶴居村で実施。ブザー音が鳴る装置を付けて飛行し、一時的には追い払えたものの、ドローンがいなくなると元の場所に戻ってしまった。同省の担当者は「別の手段を検討したい」としているが、今のところ妙案はないという。

鶴居村では18年7月から、酪農家や保護活動家ら約20人がタンチョウとの共生に向けた住民会議を開いている。観光資源であることや村のイメージ向上に役立っていることを踏まえ、農業や住民生活への影響を抑えることを目指す。村の担当者は「農業被害などの現状を確認し、村のあるべき姿を共有したい」と話す。

タンチョウが車や電線に衝突したり、家畜のふん尿をためるタンクに落ちたりする事故も後を絶たない。死んでしまうこともある。けがをしたタンチョウを受け入れている釧路市動物園によると、ここ数年は年20~30羽が運ばれてくるという。環境省は運転者に注意を呼び掛ける看板の設置や、タンチョウが電線を識別できるような囲いの取り付けを促している。

釧路市動物園では牛に蹴られて脚を骨折したタンチョウに樹脂製の義足を装着し、来園者に見える状態で飼育している。獣医師の飯間裕子さん(38)は「共生のために何ができるのか、考えるきっかけにしたい」と話した。〔共同〕

▼タンチョウ 日本や中国、ロシア極東などに分布する大型のツル。体長約140センチ、羽を広げると約240センチになる。国内では主に北海道東部の湿原周辺に生息している。かつては道内全域におり、越冬期になると関東まで渡ったとされる。 明治期の開発や乱獲で激減したが、環境庁(現環境省)が1984年から釧路市と鶴居村で給餌を行うなど、保護活動により個体数は回復した。生息域の集中による感染症のまん延を防ぐため、近年は段階的に給餌量を減らしている。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報