2019年2月17日(日)

ベネズエラ政情混乱1カ月 米介入も膠着続く

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2019/2/11 11:11
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【サンパウロ=外山尚之】南米ベネズエラで、マドゥロ大統領の2期目発足に端を発した政情混乱から10日で1カ月たった。三権と軍部を把握し盤石の独裁政権を築いたかのように見えたマドゥロ氏だったが、米国の介入で一転、窮地に。一方、「暫定大統領」としてマドゥロ氏の退陣を狙う野党指導者のグアイド国会議長も決め手を欠き、膠着状態が続く。2人の「大統領」が自らの正統性を主張する異常事態は解決のメドが立たず、混乱は日増しに深まる。

「人道援助の物資を受け入れない行為は人道に対する犯罪だ」。グアイド氏は10日、首都カラカスで記者団に述べた。経済混乱で極度の物不足で、大半のベネズエラ国民は食事を満足にとれない状況が続く。こうしたなか、米国など海外諸国は暫定大統領として承認するグアイド氏を通じ食料や医薬品を救援物資として送るが、暫定大統領の正統性を認めないマドゥロ政権は受け入れを拒否しており、非難の応酬が続いている。

ベネズエラの暫定大統領として活動する、野党指導者のグアイド国会議長(8日、カラカス)=AP

ベネズエラの暫定大統領として活動する、野党指導者のグアイド国会議長(8日、カラカス)=AP

既に暫定大統領として米国や欧州・中南米の主要国など40カ国以上から承認されるグアイド氏だが、実はその法的な根拠は脆弱だ。グアイド氏はマドゥロ氏が再選した2018年5月の大統領選を憲法違反だとして、憲法233条に沿い、大統領が不在に陥った場合に国会議長が暫定大統領として選挙を取り仕切るとしている。

この条文は明記していないものの、大統領の急死や急病を想定したものだと考えられる。マドゥロ政権はこれまで憲法を無視した独裁的な統治をしてきたことは事実だが、グアイド氏の暫定大統領就任も強引な憲法解釈の上に成り立つものであることは間違いない。

グアイド氏が強気なのは国民からの支持に加え、米国が後ろ盾として控えているからだ。トランプ大統領はグアイド氏の就任宣言直後、暫定大統領として承認すると発表。その後も米政権は「グアイド氏に危害を加えた場合、重大な対応をする」と警告しており、マドゥロ氏も動けない。

大統領府で自らの正統性を主張する、ベネズエラのマドゥロ大統領(10日、カラカス)=ロイター

大統領府で自らの正統性を主張する、ベネズエラのマドゥロ大統領(10日、カラカス)=ロイター

マドゥロ政権は「歴史的に米国が中南米で繰り返してきたクーデター支援だ」と批判する。トランプ氏の攻撃的な性格と相まって、こうした言説が一定の説得力を帯びることも事実だ。

ブラジルの民間シンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団のビニシウス・ビエイラ教授(国際関係論)は「トランプ氏は『米国の裏庭』と呼ばれる中南米地域での支配を再開しようとしている」と分析する。マドゥロ政権を支援する中国やロシアに対抗するため、「地域での影響力を強化するという意欲を見せつけている」という。

グアイド氏はマドゥロ政権を支える軍幹部などを切り崩す。これまでに駐米大使館武官や空軍少将が相次ぎ離反した。一方、軍や警察組織は依然としてマドゥロ政権の支援を崩しておらず、決め手に欠けるのも事実だ。

トランプ政権は1月28日にベネズエラの石油産業に経済制裁を加え、マドゥロ政権の命綱である外貨獲得手段を封じた。一方、マドゥロ氏は国際救援物資の受け入れを拒否した上で、「米国の経済制裁で国民に被害が出ている」と主張する。

米国という超大国の介入でバランスが大きく動いたベネズエラ情勢だが、直接の当事者である政権・野党側とも事態打開のすべを持たない。膠着状態の中、決着点は見えないままだ。

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