アフリカ、難民増に歯止めかからず 首脳ら対策協議
【カイロ=飛田雅則】アフリカで紛争や貧困から逃れる難民の増加が深刻になっている。2017年までの5年間で2170万人に倍増し、現在も増加が続く。55の国・地域で構成するアフリカ連合(AU)は10日からエチオピアの首都アディスアベバで首脳会議を開き、難民の支援や抑制に向けて対策を話し合う。受け入れる国の負担増加や政情不安への懸念も強まっており、対策が急務となっている。

10日に始まった首脳会議の冒頭では、エジプトのシシ大統領が「難民や国内避難民が故郷に帰られるように協力する必要がある」と強調した。会議は11日まで続く。
AUが対策を急ぐのは、紛争や迫害、自然災害などで住む場所を追われた難民(国内避難民を含む)が2000万人を超えて急増しているためだ。アフリカは世界の難民の30%超を占める。
13年から内戦が続く南スーダンでは約400万人が家から追われ、周辺のスーダンやウガンダ、エチオピアなどに逃れた。ナイジェリアではイスラム過激派ボコ・ハラムによる迫害から逃れるため、約200万人が国内外で避難生活を余儀なくされている。中央アフリカ、ソマリアなどで多くの難民が発生している。
国際社会が近年、懸念を強めているのはコンゴ民主共和国(旧ザイール)だ。南部などで16年から武装勢力が蜂起し、政府軍と衝突。紛争による暴力を避けるため450万人以上が住む場所を追われている。さらに18年12月の選挙結果を巡り、不正操作があったとして市民が抗議行動に出ている。対立が激しくなれば、今後も難民が増える恐れがある。
アフリカでは資源需要拡大や新興国投資ブームで10年には7%に達した経済成長率が18年は3%にとどまった。財政難の国も多く、難民を受け入れる負担は重い。国際社会からの資金支援も十分ではない。食料や住居など支援を受ける難民と、現地住民との間で摩擦が生じるケースもある。政情不安を生み、経済成長を阻害する恐れもある。
中東のシリア内戦で難民が押し寄せた欧州も神経をとがらせる。欧州への難民流入数は年間100万人以上に及んだ15年などに比べれば大きく減っている。しかし、アフリカ各地の苦境から逃れようとする難民が北上し、リビアやモロッコなどで密航業者のあっせんによってボートに乗り、地中海を渡って欧州に入る例が後を絶たない。
欧州連合(EU)はこの流れを食い止めるため、18年にアフリカでの若者の雇用創出などを目指して総額4億6700万ユーロ(約580億円)の支援策を決めたが、具体的な実施は遅れているという。
日本政府はこれまで物資の提供など難民・避難民支援を実施してきた。8月にはアフリカ諸国との関係強化を狙い、横浜でアフリカ開発会議(TICAD)を開催。難民問題に有効な対策を打ち出せるかが焦点になる。