「医療事故調査、適正な運用を」 広尾病院事故20年

2019/2/10 17:49
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東京都立広尾病院(東京・渋谷)の点滴誤投与事故から11日で20年。事故ではミスの疑いを十分に調査しない病院の対応が明らかになり、医療事故調査制度が発足するきっかけとなった。だが創設3年が過ぎても医療機関側の届け出は低迷、遺族との対立も続く。広尾病院で妻を失った男性は「せっかくできた制度。適正に運用できるようにしてほしい」と求める。

都立広尾病院事故から20年を検証するシンポジウムで事故調査制度の課題を指摘する永井裕之さん(10日、東京・文京)

都立広尾病院事故から20年を検証するシンポジウムで事故調査制度の課題を指摘する永井裕之さん(10日、東京・文京)

「医療事故は他人事ではない」。20年前の事故で妻の悦子さん(当時58)を突然失った永井裕之さん(78)は10日、都内で開かれた集会で約150人の参加者に訴えた。

悦子さんは左手中指関節の手術を受けた翌日の点滴で容体が急変、死亡した。看護師が誤って消毒液を投与したためだった。院長は「誤投与の疑いが強い」と認めながら、約1週間後に「断定できない」と態度を変え、十分に調査せず警察へも届け出なかった。

永井さんが不信感を強める中、3月に事故隠しの疑いが報じられた。1月には横浜市立大病院で患者取り違え事故が起きており、1999年は対策が本格化する"医療安全元年"となった。

「原因を調査し、再発防止につなげる組織が必要」。永井さんら遺族などを医学会も後押しして2015年10月に医療事故調査制度が創設された。だが医療事故調査・支援センター(東京・港)への医療機関の届け出件数は年400件弱のみ。当初は年1300~2000件とみられた。

都立広尾病院事故から20年を検証するシンポジウムで事故当時を振り返る永井裕之さん(右)(10日、東京・文京)

都立広尾病院事故から20年を検証するシンポジウムで事故当時を振り返る永井裕之さん(右)(10日、東京・文京)

10日の集会で永井さんは「小さく生んで大きく育てるつもりだったが、小さいままだ」と指摘。予期せず死亡した患者の遺族から「医療機関は『合併症』としてミスを否定して届け出ない」という声が後を絶たない。

永井さんは「交通事故は約20年で半分以下に減ったが、医療事故はいまだ何件起きているのか分からない」と嘆く。現在はセンターへの事故調査の届け出は医療機関のみ。永井さんは「センターが遺族の相談から医療機関に調査開始を指導するなど制度を見直す必要がある」と要望している。

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