2019年4月23日(火)

ベネズエラ、米石油制裁で進む危機 細る外貨獲得

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2019/2/10 1:30
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【サンパウロ=外山尚之】政治的な混乱が続く南米の産油国ベネズエラの経済危機が深刻になってきた。反政府側を支援する米国が現政権に圧力をかけるため、主要産業である石油産業への経済制裁を強めたためだ。一方の政府側は中国やロシアの支持を受けて対抗し、政府、反政府双方の対立は国際社会を巻き込んで膠着状態が続く。混乱が長期化すれば原油・金融市場にも影響が及ぶ可能性もある。

ゴミの中からリサイクル品を探す地元の人(1月、カラカス)=ロイター

反米左派政権のベネズエラ経済は米国などの制裁ですでに困窮状態となってきた。世界銀行の最新資料によるとベネズエラ政府の対外債務残高は17年末で1056億ドルだが、すでにいくつかの国債では元利払いが滞っていた。しかし、その危機レベルが今、一気に上がっている。

決定打となったのはトランプ政権が同国国営石油会社PDVSAを狙い撃ちした制裁に踏み切ったことだ。事実上のデフォルト(債務不履行)状態となりながらもベネズエラはPDVSAが保有する米国の製油所が担保となっている社債の利払いだけは続けてきた。同製油所がPDVSAの石油生産の要となってきたからだ。

しかし、トランプ政権はここを突いた。PDVSAの米国への輸出を原則禁じ、米国内にある資産を凍結した。年110億ドル(約1兆2000億円)の輸出収入を失い、70億ドルに上る資産が凍結された計算になる。ロイター通信によると、同制裁を受けて金融大手は相次いでPDVSA債券の取引停止に踏み切った。

英BPの統計によると、ベネズエラには16年末で約3000億バレルの原油の確認埋蔵量があり、国別では世界一を誇る。石油輸出国機構(OPEC)によると、同国の産油量は17年の日量211万バレルから18年に日量115万バレルに落ち込んだが、主要産業としてベネズエラ経済を支える。スペインのエネルギー大手レプソルがベネズエラへの債権の返済として原油を輸入するなど、PDVSAによる石油生産が担保として機能してきた。

同国産原油は硫黄分が多い重質油で、米国などから輸入した軽質油を加え石油製品に仕立ててきた。しかし制裁により、PDVSAは米国の資産が使えなくなり、石油生産そのものにも黄信号がともる。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は米国以外の第三国にもベネズエラ産の原油の取引をしないよう働きかけている。

ベネズエラ産の原油の最大の輸出先は米国であり、米国にとっても原油輸入の6%を占め、4番目の供給元だ。トランプ政権は当初はガソリン価格高騰を招きかねないと制裁に慎重だったが、昨年秋の中間選挙を終えたことに加え、シェールオイル増産で代替可能と判断。マドゥロ政権退陣を求めて最後の切り札を切ったと言える。

みずほ総合研究所の報告によると、ベネズエラの国債と国営石油会社債の元利払いは19年が少なくとも89億ドル、20年は115億ドル。一方、原資となり得る外貨準備は1月末で84億ドルにすぎない。PDVSAが破綻に追い込まれれば、事実上のデフォルト状態だったベネズエラ経済の苦境は一気に加速する。

苦境のマドゥロ政権には中国やロシアが経済支援を続け、イランや北朝鮮なども支持を表明。一方、マドゥロ大統領に反発して暫定大統領を宣言したグアイド国会議長にはカナダや独仏などが支持に加わり、主要国の思惑も絡んで混乱の先行きは見えないままだ。

「あいつらはベネズエラを……」。8日、首都カラカスの大統領府でのマドゥロ大統領の記者会見。電気が消え、突然マイクに音が入らなくなった。ブラジルの経済紙バロル・エコノミコは「1週間以内にベネズエラ国内でガソリンや軽油が尽きる恐れがある」との専門家らの見方を伝えた。

世界の原油生産量や新興国の証券発行残高に占めるベネズエラのシェアは小さく、世界経済を揺るがす事態は現時点では想定していない。だが、みずほ総合研究所の西川珠子上席主任エコノミストは「産油国の同時供給不安など複合要因が起きれば、インパクトは増幅される可能性がある」と話す。

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